物件価格2980万円、リノベーション費用1600万円。合計4580万円を、安達さんが築55年の家に投じたお金だ。もともとあった浴槽は外して、シャワールームのみ。一方で冷蔵庫はインテリアの統一感を崩さないように戸棚で覆った。冷蔵庫の開き戸にはスプーンの形の取っ手をあしらうなど、随所にこだわりが見える。
リノベーションでは、間取りより先に、気に入った素材を選ぶことから始めた。古材や建具を扱う古道具屋に何度も通い、一点ずつ選んだ建具を、職人に調整してもらいながら組み上げていった。
壁は珪藻土、床はナラの挽板、スイッチプレートも樹脂ではなく真鍮とステンレス。「樹脂製品は劣化が早く、次の世代に引き継げない」という考えから、経年変化を味わいとして楽しめる素材を選んだ。
浴槽をなくしたのも、同じ発想からだ。限られた面積のなかで、トイレと洗面、シャワールームを一つの空間にまとめ、代わりに洗面台をゆったりと確保した。
「売りづらいですよ」と言われても貫いたリノベ
そのこだわりの積み重ねが、リノベーション費用1600万円の内訳でもある。一般的な不動産業者には「個性的な間取りにリノベーションすると、転売するときに売りづらいですよ」と言われたが、意に介さず。美意識を共有できる業者を選んで自分のイメージを具現化した。

