一般入試を経験された方であれば、模試という存在の重みをよくご存じのはずです。全国何万人という受験生の中で、自分がいまどの位置にいるのか。志望校の合格ラインまで、あと何点足りないのか。この教科をあと10時間勉強すれば、偏差値がどう動くのか。数字が、次にやるべきことを教えてくれます。
数学を10時間やれば、模試の得点が数点上がる。英単語をあと500語詰め込めば、長文の読解速度が変わる。日本史のこの分野を潰せば、失点が減る。努力の量と、合格可能性の距離感が、明確に対応している。それが一般入試という制度の、ある種の“優しさ”でもあるのです。
ところが、推薦入試には、この模試という存在が事実上ありません。
科目が定まっていないのです。志望理由書、活動報告書、小論文、面接、プレゼンテーション、口頭試問――大学ごと、学部ごとに、問われる内容も形式もばらばらです。全国共通の物差しで自分の位置を測る手段は、どこにもありません。ある学部で高く評価される志望理由書が、別の学部では「うちには合わない」と一蹴されることも、日常的に起きます。
「順位がわからないまま試験を受ける」という残酷
模試がないということは、自分がいまどの位置にいるのかが最後までわからないまま、本番を迎えるということです。
一般入試なら、「E判定からD判定になった」「共通テスト模試で目標点まであと30点」といった、具体的な地図があります。しかし推薦入試の受験生は、その地図を持たずに山を登ります。自分の志望理由書は、他の受験生と比べて深いのか浅いのか。この活動実績は、この学部の中で厚いのか薄いのか。それを判定してくれる客観的な数字は、どこにも存在しないのです。
保護者の方が「うちの子は本当に受かるんでしょうか」と不安になるのは、当然です。ご本人も、志望理由書を書き上げた瞬間ですら、「これで大丈夫なのか」を確かめる術がない。この手応えのなさこそが、推薦入試の最大の苦しさだと、私は現場で見てきました。

