多くの人は、タスクが終わったことや、これ以上は無理だと感じるほどの疲労を基準にして、その日の仕事を切り上げています。しかし、これらは仕事の状況や自身の体調に振り回されている状態であり、自律的な判断に基づいた帰宅とは言えません。
一方で一流のビジネスパーソンは、仕事の進捗や疲労度にかかわらず、あらかじめ自分で決めた時刻になったことを理由に自律的に退社します。この基準を徹底しているからこそ、彼らは早く帰ることができています。
「続き」なので即・没頭できる
あえて仕事を終わらせずに職場を後にするのは、早く帰るためだけではありません。作業を途中で止めることで、翌朝に迷うことなくすぐ業務に取りかかる仕組みを整えているのです。
すべての作業を完了させてから退社すると、翌朝はゼロの状態から始動しなければなりません。始業時にまず「何をするか」を考える工程が生じ、朝の貴重な時間が削られてしまいます。一方で、仕事を途中で止めておけば、翌朝は前日の続きからスムーズに着手できます。作業の流れが頭に残っているため、業務の立ち上がりが圧倒的に速くなるのです。
この現象は、心理学において「ツァイガルニク効果」として知られています。人間は完了した事柄よりも、未完了の事柄のほうを強く記憶に留める性質を持っています。未完成の状態を維持することで、翌朝には自然と続きの作業へと手が伸びるようになります。
私が在籍していたマイクロソフトでは、複数のバイスプレジデントが退社前に共通して実践している習慣がありました。彼らは帰り際に、翌日の最初のタスクにあえて「途中まで」手をつけてから、帰路についていたのです。
メールの下書きを書きかけの状態で保存したり、企画書の冒頭だけを書いてファイルを閉じたりするといった具合です。

