「中国でも、反日的な感情を持つ人はもちろんいます。でもそういう人たちでも、日本が発展しているとか、生活環境がいいとか、高品質なものをつくっているとか、そのくらいのことはわかっている。でも日本人で中国に対して批判的な人は、中国のいいところをまったく知らない」
なぜだろう、と思った。
「中国人の中には、日本を旅行したり、日本に住んでいたりして、日本のいいところを同じ中国人に向けて発信する人たちはたくさんいます。でも、日本人に向けて、中国のいいところを発信する人は少ないんです」
そこが出発点だった。日本人向けに、日本語で発信をし、いま中国人がどんなことを考えているのか、リアルな姿を知ってほしい。
加えて中国人だけでなく、日本で暮らす外国人の声も届けたい。外国人と日々接して生きている日本人の姿も伝えたい。そんな発想から、2024年に『百様』は生まれた。
豊かになって、ほっとしてしまった日本
日本に来て14年。劉さん自身の日本人に対するイメージもずいぶんと変わった。
「中国人の間ではよく、日本人は冷たいとか本音を言わないって聞きます。でも、日本人も人それぞれですし、仲良くなれば本音で話してくれる。人間は人間、みんな同じです。文化が異なるだけなんです」
日本人の中には「中国では反日教育が行われていて、みんな日本人が嫌いなんだろう」と思っている人もいる。だが、それも人それぞれだということをわかってほしいと劉さんは言う。
「過去に日本が中国に行った侵略の事実に対しては、もちろん深刻に受け止めてもらう必要はあると思います。ただ、いまを生きる日本人に対して憎しみを持っている中国人はそう多くないと思います。そもそも、大嫌いだったらこんなにたくさん日本に来ないですよ」
2025年末の時点で93万人の中国人が日本で暮らす。同年の中国人の訪日客数は900万人を超える。日本人とわかり合いたいと考えている、劉さんのような中国人だってふつうにいる。
そんな劉さんの目に、いまの日本は「もったいない」とも映る。
「経済や社会が発達して豊かになって、みんなどこかほっとした生活を送るようになり、思考停止してしまっているように思うんです」
それが日本の閉塞感や停滞感につながっているのではないか。
「日本人には考える力がしっかりあるはずなのに、もったいない。中国の歴史で言うと、日本の現状は清朝に似ている部分があると感じています」
17世紀に建国された清は著しい経済成長を遂げ、安定した時代を築いた。しかし劉さんいわく、そこで思考停止したことが衰退につながったという。人口急増による貧富の差の拡大に対応しきれず、政治体制の近代化に遅れ、欧米列強の侵略を招いた。その歴史を、日本にはたどってほしくはないとも考えている。

