だから取材時には聞くことに徹し、原稿にもなるべく自分たちの感想は差し挟まない。劉さんが中国人ということもあり、取材対象者も中国人が多くはあるけれど「メディア全体の方向性は、できるだけ中国寄りにも、日本寄りにもしたくない」と言う。
「ただただ、日本社会におけるひとりの外国人として取材したいんです」
劉さんのそんな思いに共感し、なんと8時間も取材に応じてくれた人もいたそうだ。
「終わったときはふらふらでした(笑)」
大手メディアの記者なら、必要なことが聞けたら途中で話を打ち切るかもしれない。しかし劉さんは「とにかく聞く」ことを大事にしていると話す。
「記事には使わないかもしれないけれど、相手がどういう人柄なのか、ちゃんと把握したいんです。だから、ぜんぶ聞く」
また、『百様』は日本語のメディアなので、対象としている読者はおもに日本人だ。当然、劉さんは中国人以外に対しては日本語で取材をし、日本語で記事を書く。原稿はともに運営をしている日本人にも校正をしてもらうというが、それでもなかなかにたいへんだ。
加えて、取材を受けてくれる人を探すのもひと苦労だ。国際交流関連などのイベントに顔を出し、名刺を配り歩き、人を紹介してもらったりと、地道な人脈づくりを続けている。
これだけの時間と労力、それに、サイトの管理やサーバー代などお金もかけているが、『百様』はまだマネタイズできていない。基本的にはすべて無償での活動だ。劉さんの本業はAI関連のベンチャービジネスで、そちらも忙しいのだが、どうして『百様』に情熱を注いでいるのだろうか。
「いま、日本に外国人が増えてきていることを、みんなが身近なこととして考えなきゃならない時代になっていると思います。日本に住んでいる外国人として、両者をつなぐ『橋』が必要です。それは自分自身のためにも、日本社会のためにも、外国人のためにも」
被災地支援をする中国人たちも取材
心に残っているインタビューはいくつもある。
「日本で活動している在日中国人のボランティア団体を取材したことがあるんです。外部からの支援なども十分でなく、運営はすごく厳しいんですが、それでも月に一度食料の配布をして、ホームレスの方におにぎりや飲み物を配っているんです。日本人だけじゃなく、外国人の団体もこういう活動をしていることが意外でした。僕も実際にボランティアに参加しながら取材したのですが、本当に感動しました」

