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ライフ #開業医がこっそり教える医療のリアル

「教授が手術を独占する…」若手の不満と荒れ果てた研究室を救い絶頂期で去った医師が、図らずも大学に残した"貢献"

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小児外科医 手術
小児外科医として、大学病院で日々手術をしていた頃の筆者(左)(写真:筆者提供)
  • 松永 正訓 医師・ノンフィクション作家
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ぼくは医師になって3年目から大学院に進み、小児がんの遺伝子研究で大きな成果を上げた。どれくらい大きいかというと……あんまり言うと鼻持ちならないのでやめておく。ま、いずれにして欧米の研究グループと競争になるような研究をしていた。

さて、問題は大学院を終えたあとである。ぼくが大学院で研究をしていた場所は分子ウイルス学教室。分子ウイルス学教室の教授は、ぼくが大学院を修了しても実験室を自由に使っていいと言ってくれる。ぼくは実験が続けられることがうれしかった。だけど……だけど、これでいいのか?

小児外科の教授からも「うちの研究室をどうにかしてくれ」と言われる。ぼくだって5年も10年もよそ様の研究室で実験をするのはどうかと思う。そこで一念発起して、「荒れ野」の研究室を大掃除して自前の研究室を作ることにした。

その「荒れ野」の具体的な光景を書くのは、いろいろな意味でちょっと躊躇する。陳腐な表現でいえば、足の踏み場もない、みたいな? それから完全にコンプライアンス違反のゴミの放置もあった。やると決めたからにはやる。

ぼくは夜な夜な研究棟に通って大掃除をした。大量のゴミ出しをして、教授から200万円出してもらって実験機器を揃えた。研究室を立ち上げるまでに3カ月かかった。

実験室が完成したときは、やっぱりうれしかった。自前の実験室を持ち、自前で研究できるのは充実感がある。実際、小児がんの分子生物学的研究を小児外科の実験室でもやり続けることができて、立派な英語論文にすることもできた。

今や「毎年研究費を取って当たり前」の状態

こうなると、科学研究費が獲得しやすくなる。お金が降りてくれば、どれだけ臨床が忙しくても研究しなくてはいけないので研究する。で、実績が上がる。すると研究費を獲得できる。好循環である。

現在の千葉大小児外科は毎年研究費を取って当たり前の状態になっている。昔とはえらい違いだ。サッカー日本代表が毎回、ワールドカップに出場できるようなものだ。それもこれも、ぼくが掃除をしたおかげだ(えへん)。

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