3番目の貢献。これが一番大きい。それはぼくが44歳の若さで大学を辞めたことである。
44歳のぼくは、小児外科医としてあらゆる面で脂が乗り切っていた。小児外科の手術だったら何でもできると思っていた(今の小児外科医は研修システムの違いから一人前になるのにえらく年数がかかる)。
研究に関してはすでに触れた。学生教育も人一倍、熱心にやった。その当時、日本の小児外科医でぼくの名前を知らない人はいなかったはず。世界となると……ま、無名かな。
脂が乗り切った人間が辞めると、組織が活性化する
いずれにしてもぼくはパワーに満ち溢れていた。そういう人間が辞めるというのは、組織として実にいいことである。何と言っても後輩が育つ。最初の話に戻れば、ぼくがいないことで後輩に手術の順番が回ってくる。研究も教育も次世代に引き継がれる。小児外科というチームが活性化されるのである。
組織に新陳代謝は絶対に必要だ。同じメンバーで安定して組織を運営している……そんなものは安定ではない。硬直である。マンネリ化した集団からは、新しい発想も挑戦も生まれない。人が生き物であると同様に、組織も生き物である。組織が生き残っていくためには、人間が入れ替わった方がいい。
ほとんどの国立大学の定年は65歳だ。これは遅すぎると思う。ぼくの知る限り、千葉大を65歳で退職した教授たちは、引退などせずに次の職場に就職している。65歳で再就職って中途半端では? どうせ働くなら60歳くらいでスパッと辞めて、そこからセカンドキャリアを始めた方がいいように思える。それに人間の知的アクティビティーなんて60歳くらいがマックスでは?
先日、YouTubeで『ABEMA Prime』を見ていたら、竹中平蔵さんが「これまで自分はたくさんの老害を見てきた」とおっしゃっていた。するとすかさず成田悠輔さんが「竹中さんが、まず率先して引退なさったら」とツッコミを入れていた。ぼくには知識がないので竹中さんが老害かどうかわからないが、先人が辞めて後輩に道を譲ることは大切なことである。
スティーブ・ジョブズが亡くなって、ティム・クックがCEOに就いたとき、ここまでApple社が発展するとは誰も思わなかったのではないか? 「若い者にはまだまだ任せられん!」というトップってけっこういるはずだ。でも、そういう組織は伸びないと思う。
ぼくは、グチを聞き、掃除をし、そして辞めた。これらがぼくの大学への最大の貢献だ。なかなかできることではないと、ぼくはけっこう、このことにプライドを持っている。

