「観光地化しない」の真意
中尾さんに、既出の記事で読んで気になっていた、「観光地化しない」というコメントの真意を聞いた。
「観光地化した市場って、国際事情に影響されるじゃないですか。コロナにも影響されましたしね。世相によって影響を受けるようなことは、あってはならんなというのがひとつ。それと、旦過の成り立ちを考えて。近隣のお客さんを中心にやってきた。この辺の飲食店さんも買い物してます。長年それでやってきてますから、それは崩したくない。地域の皆さんに迷惑をかけたくない」
シャットアウトするという意味ではない、と付け加える。
「その上で、インバウンドの方たちも来ていただけるのはありがたい。僕たちの市場はこういう市場ですよと。日本のローカルの市場を体験しに来てくださいねという意味合いです」
中尾さん自身、商店街巡りが大好きだという。海外でも釜山の小さな市場のような、観光地化されていないローカルの市場を探して歩く。
「ローカルの市場の良さって、人々の生活が見えるところですよね」
行政からは、新しくなったら体験型のイベントをしませんかと言われる。
「いやいや、ここに来ること自体が体験なんだって、僕はよく言うんですよ。改まってそういうことをする必要はなくて。いま来てるお客さんだって、旦過市場を体験してるわけですよ」
英語と韓国語を勉強した中尾さん。それは、案内のためではない。
「海外から来る人たち、みんな少しは日本語の勉強してくるんですよ。一生懸命日本語で喋ってるのに母国語で返されると、興ざめなんですよ。喋らせてあげる。それが体験でしょ」
前編で見た光景を思い出した。青空市場で、韓国から来た3人組が、カタコトの日本語でおばちゃんとやり取りしながら、ビールで乾杯していた。外国語の案内表示はほとんどないのに、彼らは楽しそうだった。あれが、中尾さんの言う「体験」だった。
地元の人や飲食店が通う市場だからこそ、観光客にとっても魅力的なのだ。観光地化しないこと。その言葉の意味を教えてもらった。

