夫婦関係を終わらせたくない、という気持ちは互いに同じだった。それは関係を続けるための改善策だと思っていた。
しかし、彼の幸福感は長くは続かなかった。
「実際に始めてみると、僕は家庭で向き合うべき問題から逃げるように、外へ居場所を求めていました。彼女はその場では『大丈夫』と言ってくれていたので、本当に受け入れてくれていると思っていた。でも今思えば、彼女の苦しさを全然理解できていなかったんだと思います」
夫はオープンリレーションシップを実際に経験したうえで、それをうまく継続させるのは難しいと語る。
もともと2人はオープン婚として結婚したわけではなく、それまでは特定の相手とだけ向き合う、一般的な一夫一婦制の結婚生活を続けるつもりでいた。しかし、この先も一緒にいるにはどうすべきか考えた末にたどり着いた選択がオープンリレーションシップだった。
赤信号が見えていた
章子さんは当初、「きっと大丈夫」だと思っていた。しかし、気持ちは変わっていった。乳飲み子を抱えながら、他の女性とのデートに出かけていく夫を見送る。残された章子さんの胸には、行き場のない問いがこみ上げてきた。
「私、何のためにこんなことやってるんだろう、って。でも、しょうがないかとも思って。子どもたちと家に残ったときは、やっぱり寂しかったです。
自分が作り上げてきたものが崩れていくような、否定されているような気分になりました。今までやってきたものが全部、意味のないことのように思えて……」
そんなとき、章子さんはひとりの男性と出会う。そして、恋に落ちた。
「心が枯渇していたところに、ひと雫の水を与えられた感じでした。だから、もっともっと、となってしまう自分もいて……」
章子さんは、その相手にすがるようにひかれていった。気持ちは、危うい所まで近づいていた。
「一番やばいなって思ったのは、全部置いてこの人と一緒に行ったら楽になれる、って思っている自分がいたこと。赤信号が見えてるんです。けど、この苦しみから逃れたくて、一番楽な選択をしようとしているのもわかっていて……」
けれど、心の中には冷静な自分もいた。<ここで自分でなんとかしなければ、相手を変えても、何年か後にまた同じ問題にぶつかる>。
「子供を、こんな利己的な理由で手放してしまったら、一生後悔しても後悔しきれない。これで本当に幸せになれるかって言ったら、なれないと思って」
結果、章子さんは夫と離婚を決め、恋人とも距離を置くことにした。

