(前編の続きです)
国際結婚から10年、3人の子どもを抱えながら離婚を決意した章子さん(仮名・30代後半)。離婚後は、元夫と買った異国の家にひとりで暮らしながら、隔週で子どもたちの世話をしている。
章子さんは、スペイン語で企業の通訳をこなし、語学力を生かした個人向けのサポート業務もそつなくこなしていた。現地人とのやりとりにも困らない。元夫を介さずとも、この社会で渡り合える人だ。
それでも、「ずっと、綱渡りしている気分です」と胸中を明かす。
落ちたら、どれだけの底があるのかもわからない。だから落ちないように、一日一日を必死に生きている。
離婚後にぶつかった壁
スペイン人夫との離婚の決定的瞬間は、「もう恋のひとかけらもなくなった」と気づいたときだ。夫は、子どもたちにとってはいい父親だった。なんとか前の関係に戻れるように努力を繰り返したが、もう気持ちがついていかなかった。離婚を決断するまでに、3年の年月がかかっている。
それでも、いざひとりになってみると、痛感したことがある。スペイン社会は、「外国人」にはなかなか冷たい、ということだった。第1子を産んでからの約7年間、専業主婦として家庭に入っていた章子さんにとって、それは初めて直面する現実だった。 アパートの一部屋を探しても、なかなか契約に至らない。通訳やガイドの単発の仕事だけでは、子ども3人を養っていくだけの収入にはならない。
「たぶん、自分にもっとお金があったら、もう少し早い段階で離婚を決断してたと思います。それに、夫婦として10年間積み上げてきたものがあったぶん、気持ちの面でも別れる決断は簡単ではなかったです」
自分で選んだ離婚だった。子ども3人を抱え、異国で、ゼロから。
「私、ここでもう一度、ゼロからやり直すつもりでやっています。うまくいかなくても、それは覚悟の上。うまくいけば、ラッキー。そう思うようにしています」
そして章子さんは、ひとつずつ道を切り開いていった。オンラインでの語学講師の仕事を立ち上げ、村のレストランでのアルバイトも紹介でつかみ取り、ガイドの仕事も請け負う。子ども3人を抱えながらの、綱渡りの日々だ。

