その誘いに間接的に知り合いだった当時20代の夫婦が応じて店舗をセルフリノベーション。2011年に家具とコーヒーの店「ISANA」が誕生した。
続いて2012年には偶然訪れた当時30代の陶芸家夫妻が陶磁器工房&陶芸教室「青人窯」をオープン。この頃から沼垂がメディアで取り上げられるようになった。レトロな長屋の中にしゃれた雰囲気のカフェや工房が並ぶさまが話題になったのだ。それに伴い、ここに店を出したいという相談も増えてきた。
全部買い取って「まちの活性化」を目指す
だが、新たに店舗を借りるには問題があった。空き店舗自体はまだまだあるのだが、建物は市場の協同組合が所有。規約で組合員以外が使える部分の割合が決まっており、もう借りられる枠がなかったのだ。
そこで以前から店舗を借りる際などに相談していた組合のキーパーソンに打つ手はないかと聞いたところ、それなら建物全部を買い取ったらどうかと言われた。
空き店舗が多いとはいえ、新潟駅からは徒歩圏の立地で、数千万円の大きな買い物である。一部だけを買うことはできないかなどいろいろ考えたものの、最終的には全部を買い取ることを決意。事業計画を書き、数字に加え、このまちを活性化するという熱意も示して地元銀行と交渉をした。
幸い、話が出た2013~2014年は社会が地方創生に目を向けていた時期。「まち・ひと・しごと創生法」が制定されたのが2014年である。加えて実家である大衆割烹・大佐渡たむらは地元で半世紀にわたって営業してきており、信用がある。経営に当たるのも地元育ち。
そうしたことから、地元銀行は全額を借り入れたいという要望にOKを出し、無事、建物全部を買い取ることに。同時にまちづくりにきちんと取り組もうと田村さんは実姉の高岡はつえさんと一緒に地域の経営にあたる法人、株式会社テラスオフィスを設立した。
2014年の借り入れから1年。空きのあった店舗が全区画埋まったことから2015年4月には「沼垂テラス商店街」としてスタートすることになった。
新たに商店街が立ち上がることのないだろう時代だからこそ、名称はあえて「商店街」とした。以降、何もないところに誕生した商店街がほとんどないことを考えると、ある意味、奇跡の商店街といえるだろう。
店舗数は28。田村さんが店を出す前から営業を続けていた八百屋、雑貨店などの4店舗に、前述の先駆的な3店舗、そしてこの場所に魅力を見出し、新たな挑戦を始めた21店舗が加わっての船出だった。

