しかしソフトバンクは、これまで原則としてポスティングによるMLB移籍を認めてこなかった。エースだった千賀滉大は毎年のようにMLB挑戦を球団に訴えたが、メッツに移籍したのは海外FA権を取得した後だった。
海外FA権を取得するには、1軍登録日数145日を1シーズンとして換算し、通算9シーズン分に達する必要がある。今年21歳の佐々木がソフトバンクに入団したとしても、海外FA権によってMLBに挑戦できるのは、順調に登録日数を積んでも30歳前後になる。
これは現実的な選択肢ではないだろう。
もちろん、契約金の金額だけで佐々木が進路を決めるとは考えにくい。大谷翔平との関係性やスタンフォード大というキャリアを含め、佐々木はすでに日米で高い注目を集める存在だ。NPBとMLBの契約条件に差があったとしても、それだけで判断が左右されるとは限らない。
日本をスルーして直接MLB球団へ行くのか
佐々木には、マーリンズと契約せず、スタンフォード大に戻って来年のMLBドラフトを待つという選択肢もある。
しかし今後、打撃成績が多少向上しても、守備位置や走力を含めた佐々木の基本的な評価は、大きくは変わらないのではないか。
さらに言えば、野球選手としてのキャリアの「その先」もある。
スタンフォード大には休学・復学の制度があり、大学を離れた後に学業へ戻る道がある。通常の休学期間は通算2年までだが、学籍が中断した場合も、所定の手続きを経て復帰することができる。実際、長期間大学を離れた後に復学し、学位を取得する学生もいる。
そうなれば、日米の野球界にとどまらず、幅広いジャンルに可能性が広がる。筆者は、こうした野球人生の先まで見据えた選択肢も、佐々木の判断に影響するのではないかと思う。
マーリンズとの契約交渉期限は、米東部時間7月27日午後5時だ。
厳しい挑戦になるとは思うが、佐々木麟太郎はマーリンズと契約し、MLBを目指す道を選ぶだろうと筆者は考えている。
日本人選手のMLB挑戦は、これまでNPBを経由するケースが主流だった。しかし今後は、佐々木のようにNPBを経ず、直接MLB球団の傘下へ進む若者がどんどん増えるだろう。
筆者はこれを深刻な「人材流出」だととらえている。

