だからこそ、AI影響度を知ることは極めて重要です。業界のAI影響度を知ると、その業界における「空白」の構造が見え、あなた自身が業界のなかでどのように振る舞うべきかが自ずと見えてきます。それではここから、AI影響度についての理解を深め、あなた自身の未来を模索しましょう。
AI影響度という物差しを使えば、自分自身の業務を「AIによって効率化できる作業」と「自分自身が責任を持つべき空白」とに分解することができます。これこそが、あなた自身の未来の働き方を変える第一歩です。具体的にどのように分解するのか、身近な仕事を例にして見ていきましょう。
営業も法務も経理も「意思決定」は人間の仕事
たとえば、営業の仕事を考えてみましょう。営業の仕事といっても、その内容はさまざまです。顧客との商談、提案資料の作成、過去データの整理、見積書の作成、会議の議事録作成など。このうち、提案資料の下書きを作ることや、過去の事例を整理することは、AIによって効率化しやすい業務です。
一方で、顧客と直接会って信頼関係を築いたり、最終的な条件を決めたりといった意思決定にかかわる業務は、人間の役割が大きな「空白」の業務です。このように、あなた自身が責任を持って意思決定を担う業務が、AIにとっての「空白」の業務ということになります。
法務や経理でもその構造は同じです。法務であれば、契約書の条文を照らし合わせたり、過去の判例を調べたりする業務はAIの影響を受けやすいでしょう。しかし、最終的にどのリスクを引き受けるかを意思決定する業務は、人間の責任のもとで行われます。
経理であれば、伝票入力や仕訳の作成は自動化が進みやすいですが、資金を調達するための計画を作ったり、経営陣に対するアドバイスをしたりといった意思決定にかかわる業務は、引き続き人間が責任を持つ「空白」の業務です。
プリンストン大学のエドワード・フェルテンらが考案したAI影響度は、仕事の内容を細かな業務に分解し、それぞれがAIで代替しやすいかどうかを可視化します[3][5]〜[7]。正式にはAIOE(AI Occupational Exposure:AI職業暴露度)と呼ばれますが、本書では「AI職業暴露度」では概念が伝わりにくいため、「AI影響度」と意訳しています。
AI影響度が登場したことで、単に「職業がなくなるかどうか」という議論は過去のものになりました。「金融業界は危険だ」「IT業界は安全だ」などといった業界全体の粗い評価には、もはや意味はありません。
むしろ、AI影響度によって、AIの影響を受けやすい業務と受けにくい業務を棚卸しする。それによって、AI導入による変革を主導することにこそ、いま私たちは注力すべきなのです。

