Apple Watchは、もともと運動やフィットネスの道具として登場した。しかし今では、心電図、心拍数、月経周期、聴覚の保護、そして睡眠時無呼吸の通知や転倒検出まで、守備範囲を大きく広げている。ビアンキ氏はこの歩みを、劇的な転換点があったわけではない「有機的な進化」だと表現した。
その原動力になったのは、ユーザーからの声だという。初期の活動量計や心拍数の機能が、生活をどれだけ変えたか、時に命を救ったか。そうしたフィードバックが開発チームを動かし、次の機能を生む好循環になったとビアンキ氏は語る。腕時計が「見張り役」へと育っていく過程は、一足飛びの発明ではなく、地道な積み重ねの結果だったわけだ。
ビジネスの視点で見れば、この積み重ねは各社の競争軸そのものでもある。サムスンやWithings、フィットビットもそれぞれの強みでヘルスケア機能を広げており、消費者にとっては選択肢が増えている。医療機器としての承認を取りにいく各社の姿勢は、スマートウォッチが「便利なガジェット」から「健康を見守る道具」へと役割を変えつつあることを示している。
連休は、自分の健康を見直す入り口になる
睡眠時無呼吸症候群のように、自覚のないまま進む病気は少なくない。その最初の「気づき」を、毎晩着けて寝るだけの腕時計が与えてくれる時代になった。高価な検査を受けたり、我慢を重ねたりする前に、日常のなかで体の異変の兆しを拾える。この手軽さこそが、いまスマートウォッチをヘルスケアの入り口として考える価値だと筆者は思う。
もちろん、これらの機能は診断そのものではない。あくまで医師に相談するきっかけを与えるものであり、アップル自身もその点を明確にしている。それでも、80%が気づいていないとされる病気に対して、最初の一歩を後押しする意味は小さくない。
連休などで生活のリズムを見つめ直すこの時期は、自分の健康と向き合う良い機会でもある。どのメーカーの製品を選ぶにせよ、腕元のデバイスが健康の見張り役になりうるという事実を、選択肢の一つとして知っておいて損はないはずだ。医師がエンジニアの隣に座って作った機能が、あなたの体の小さな変化に、いちばん早く気づいてくれるかもしれない。

