訴状によると、元エンジニアのLiu氏は退職後の2月上旬、認証の不具合を突いてアップルの社内ファイルサーバーに接続できることを発見した。アップルに報告せず、未発表製品の情報や技術仕様を含む数十件の機密ファイルをダウンロードし、当時まだアップルに在籍していた元同僚に共有したとされる。社給端末に残されたメッセージや、発覚を避けるため連絡手段を別のアプリに切り替えた経緯まで、訴状は具体的に記している。
ハードウェア部門トップのTan氏に対する主張は、採用活動での機密引き出しが中心だ。OpenAIの面接でアップルの内部コードネームを使って未発表製品の状況を尋ね、在職中の応募者にバッテリーやメインロジックボードなど担当部品の持参を指示し、実物を見せる「ショー・アンド・テル」を行っていたと訴状は主張する。退職時のセキュリティ手順を記したアップル社内文書を、転職予定者に事前共有していたという記述もある。
ただし、これらはいずれも係争の一方当事者であるアップルの主張で、裁判所が認定した事実ではない。OpenAIは訴状の内容を認めておらず、法廷での反論はこれから始まる。
400人超の元アップル社員が支える開発体制
OpenAIのデバイス計画がアップル人材に依存してきたことは、経緯を追えば明確だ。出発点は2025年5月、アイブ氏らが創業したioを約65億ドルの株式交換で買収したことにある。この時点でTan氏に加え、アップルのインダストリアルデザイン責任者だったEvans Hankey氏らが合流した。
その後も引き抜きは続いた。規模については訴状の記述が端的で、OpenAIには400人以上の元アップル社員が在籍するという。アメリカ・ブルームバーグは25年11月の時点で、OpenAIが1カ月で40人を超えるハードウェア人材を採用し、多くがアップル出身だと報じていた。採用元はカメラ、シリコン、製造、Vision Pro開発までほぼ全部門に及び、26年6月にはVision Proとスマートグラス開発を率いたバイスプレジデントのPaul Meade氏の移籍も伝えられた。
製造網も重なる。OpenAIはiPhoneの組み立てを担うフォックスコンと生産で組み、部品ではラックスシェアやゴアテックといったアップルのサプライヤーを起用したと訴状は指摘する。訴状には、アップルと専属契約を結ぶパートナー企業に、アップルの許可があると誤信させて独自の金属仕上げ加工をOpenAI製品向けに実行させたという主張まで含まれる。

