有料会員登録 東洋経済オンラインとは
ビジネス

通信をソフトウェアで握ったソラコム、生成AI時代に現場データで競争優位を築けた理由

8分で読める
玉川憲CEO
基盤モデルが横並びになる時代に競争力はどこに生まれるのかと問いかける玉川憲CEO(写真:筆者撮影)
  • 石井 徹 モバイル・ITライター
2/3 PAGES

しかも同社は、その通信を専用設備ではなくクラウド上のソフトウェアとして自前で作ってきた。AIに渡す現場データの入り口を、自在に作り替えられる形で握っている。これがAI時代に同社が強い理由の骨格で、この日の発表群もすべてこの延長線上にある。

総合格闘技をAIに肩代わりさせる

センサーやカメラで現場を自動化するIoTは、効果が見えていても着手しにくい領域だった。それでも成果は出始めている。同社のローコードツール「SORACOM Flux」を使い、東洋製罐は缶の品種を切り替える際に目視で行っていたラインの点検を自動化した。日本航空グループのJALカーゴサービスも、空港の冷蔵コンテナの積載状況をAIで分析する仕組みを現場担当者の手で内製した。

ただ、こうした取り組みを本格的に広げようとすると、デバイス、通信、クラウド、AI、セキュリティと複数の専門領域にまたがる壁に突き当たる。玉川氏はこの難しさを「総合格闘技」と表現する。

この壁を崩す一手として基調講演の目玉に据えたのが、AIエージェントサービス「SORACOM Agent」だ。IoTの専門知識を持ったAIエージェントが、企画から開発、運用までを対話で伴走するサービスで、7月7日から検証目的の先行版として提供を始めた。

デバイス、通信、クラウド、AI、セキュリティにまたがるIoTを総合格闘技と表現した(写真:筆者撮影)
マネージドAIエージェントサービスのSORACOM Agent(写真:筆者撮影)

講演でのデモはわかりやすかった。各地で被害が広がるクマやアライグマを念頭に「箱罠IoTやりたいです」と話しかけると、AIが動物の種類や罠の大きさを質問しながら仕様をまとめ、必要な部品と組み立て方を示し、罠が作動したら担当者に通知が届くクラウド側の仕組みまで自律的に構築してみせた。

箱罠IoTのデモ。仕様の相談からアプリの自動構築までをAIエージェントと対話しながら進めた(写真:筆者撮影)

やり取りは長期記憶としてたまり、使うほど自社の業務に詳しくなる。データはユーザーごとに隔離した環境で扱い、蓄積された知見は顧客自身の知的資産として手元に残る設計だ。

社内文書を学習させてAIボットを作る既存サービス「Wisora(ウィソラ)」との連携も発表した。総務ボットにオフィスの飲み物の在庫を尋ねると、SORACOM Agentがカメラを動かして棚を確かめ、回答する。書類しか読めなかったAIが、現場の状況をリアルタイムに答えられるようになる。

総務ボットにオフィスの飲み物の在庫を尋ねると、SORACOM Agent経由でカメラ映像を確認して回答した(写真:筆者撮影)

もっとも、講演のデモは同社が整えた環境でのものだ。多様な現場でどこまで通用するかは、検証目的の先行版という提供形態のとおり、これから見極める段階にある。

音声にも踏み込んだ。駐車場の精算機やエレベーターの緊急通報のように、機械に付いた電話で係員と話す場面は身の回りに多い。ただ、普通の電話回線を機械に持たせると、どこからでも着信してしまう。同日発表の「SORACOM Air RTC Gateway」は、機器の通信部品が標準で備える通話機能(VoLTE)を生かし、自社のコールセンターやAIといった決められた相手とだけつながる電話に仕立てるサービスだ。

3/3 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ビジネス

人気記事 HOT

※過去1ヶ月以内に配信した記事の閲覧数