脳手術を選んだ音楽家
山田力さん(60歳)はバッハ専門の音楽家・ピアニストだ。長年、生徒を指導しながら、地元・福岡のホールなどでコンサート活動を続けてきた。
違和感に襲われたのは2021年秋のこと。ピアノの演奏中、右手の薬指、次に小指、そして中指の順に丸まってしまうようになった。オクターブや和音がそろわない、連続で弾けないなど、症状は悪化していった。
おかしいと思いながらも、心当たりがあった。以前教えたジストニアの生徒と同じ症状だったからだ。指を寝かせて弾くなど工夫を重ね、指導やコンサートに臨んだ。家族や生徒には1年以上、打ち明けられなかったという。
それでも、演奏活動を続けること、症状を克服することだけは、最初から心に決めていた。「バッハは指10本でなければ弾けない。絶対に自分の演奏を取り戻そうと思っていた」(山田さん)。
現状、ジストニアの根本的な治療は脳の手術しかない。頭蓋骨にドリルで穴を開けて熱した金属の棒を挿入し、脳の深部を焼く手術だ。ろれつが回らない、言葉が出にくくなるといったリスクを伴う。成功しても以前のスピードで弾けない可能性や、再発もありうる。
家族が脳手術に反対したこともあり、ひじ部分(肘部管症候群)の手術も受けたが、改善はなかった。もはやほかの道はない。「俺、穴開けるけん」と家族を説得し、24年10月に手術に踏み切った。この分野で著名な平孝臣医師が担当した。
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