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「えっ、愛人たちにお店をまかせたの?」朝ドラ 《風、薫る》では絶対に描かれない"明治の牛鍋の王"スゴすぎた伝説

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『風、薫る』でも言及された牛鍋。(写真:BASICO / PIXTA)
  • 真山 知幸 伝記作家、偉人研究家、芸術修士(MFA)

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NHK連続テレビ小説『風、薫る』で、一組の夫婦がクローズアップされた。慢性胃腸炎で胃がんの疑いもあることから入院が決まった山本辰治と、その妻テイである。

山本が治療に前向きなのは、ひとえに「牛鍋を食べるため」。毎年夏の花火の夜、夫婦で牛鍋を囲む。それが2人の年に一度の贅沢だったようだ。妻のテイが担当看護婦のりん(演:見上愛)にこう呆れてみせた。

「牛鍋ってご褒美でもないと、この人頑張らないから」

山本が退院するときには、りんは「これで花火の頃に牛鍋食べられますね」と声をかけるが、その後、病状が悪化し再入院となり再手術を受けた山本。思った以上にがんが広がっていることが判明する。 そんな中、妻のテイも発熱によって見舞いに来られなくなってしまう。

ささやかな希望として描かれた牛鍋

やがて花火の日を迎えると、山本はりんの協力を得て病院を抜け出し、家で伏している妻のもとへ。そして「牛鍋を食べてきた」と告げて、こう満足げに話した。

「手術、してよかった。お前のおかげだ。はあ〜うまかった。しかたねえからお前のぶんも食ってきて腹いっぱいだ」

妻が自分に手術を受けさせたことを後悔させないための、山本の嘘だった。

庶民のささやかな希望として牛鍋が描かれることになったが、その背景には、明治における食文化の大きな転換があった。

日本では、仏教の影響により飛鳥時代以降、実に約1200年にわたって肉食が禁じられてきた。牛や馬といった家畜の肉は、穢れたものとして庶民の日常から遠ざけられていたのである。

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