川沿いに無骨な石造りの建物が建っている場所がある。外壁には無造作に石が貼り付けられ、川に迫り出すように建つ共同浴場だ。一方、川が丸ごと温泉になっている場所もある。川底からふつふつと湯が湧き、川全体がそのまま巨大な露天風呂になっていた。
どちらも群馬県にある、現役の共同浴場だ。観光のために作られたわけではない。管理する組合の担い手は減り続け、維持費の負担も重い。それでも、この場所はまだある。この風景は、どのようにして生まれ、これからどこへ向かうのか。
【河原の湯】川沿いの古びた石造りの建物は、地元民の日常の風呂だった
群馬県吾妻郡中之条町四万(しま)地区、旅館が立ち並ぶ四万温泉の一角に、明らかに周囲と異質な建物がある。地元の共同浴場「河原の湯」だ。川に迫り出すように建ち、黒ずんだ石壁が独特の存在感を放っている。
扉を開けると、むっとした湯気が顔を包む。中は思ったより狭い。竹すだれの天井、無造作に積まれた石壁――そこに小さな湯船があり、無色透明の湯が静かに満ちていた。
取材で訪れた日中、何人もの観光客が扉を開けて中を覗き込んだり、実際に入浴していったりした。観光客が利用できるのは午前9時から午後3時まで。管理人が常駐しているわけではなく、時間になるとオートロックが自動で開く仕組みだ。

