2024年5月までアメリカ海軍横須賀基地(神奈川県)を母港としていた原子力空母「ロナルド・レーガン」で、大規模な薬物事件が摘発されていた。幻覚剤LSD(リゼルグ酸ジエチルアミド)などを乗組員の間で流通させていたとして、計58人の水兵が処分された。
アメリカ軍の準機関紙「星条旗新聞」が6月26日、アメリカ海軍当局者の説明として公開された軍法会議記録に基づいて報じた。58人の内訳は、6人が軍法会議、24人が行政処分による除隊、28人が外出禁止や減給などの非司法処分だった。公開記録で確認できるのは、このうち軍法会議にかけられた6人の裁判記録である。
驚くべきは、裁判記録には薬物が艦内の水兵の間だけでなく、横須賀基地外の住宅や、民間人とみられる人物に接点を持っていた可能性を示す記述も含まれている。
ただし、公開記録では、基地外の受け渡し先の氏名、人数、所在地は明らかにされていない。日本人や横須賀市民に実際に薬物が渡ったと、裁判で具体的に認定されたわけでもない。記録上は、捜査や公判前拘禁をめぐる手続きの過程で示された疑い、または関係者の供述にとどまる部分が多い。
それでも、裁判記録に「住民」「身元不明の市民」「日本人市民(Japanese citizens)」といった表現が出てくる意味は小さくない。横須賀を拠点としていたアメリカ軍空母からの薬物流通が、艦内だけで完結していなかった可能性を示しているからだ。
捜査の端緒は水兵の転落死
捜査のきっかけは、2023年3月13日にロナルド・レーガン所属の22歳の水兵が横須賀の宿舎から転落死した事案だった。司法解剖で水兵の体内からLSDが検出され、押収された携帯電話の解析などを通じて、アメリカ海軍犯罪捜査局(NCIS)が薬物の所持、使用、配布に関する手掛かりを得た。裁判記録は、転落の原因やLSDとの因果関係を明らかにしていない。
軍法会議記録で中心的な役割が浮かぶのは、応急工作担当の下級水兵だったエンジェル・タッカー氏である。アメリカ海軍法務部(JAG)が公開した記録によると、タッカー氏は2022年2月から2023年5月にかけて、郵便公社(USPS)を使ってアメリカから日本へ送られたLSD入りの荷物を計7回受け取っていた。各荷物には350~1000錠のLSDが入っていたとされる。
タッカー氏はそれらの荷物を、共謀者とされる別の水兵の基地外住宅に運び、一部を空母艦内の水兵に配布した。サイロシビンを含むいわゆる「マジックマッシュルーム」も同様に扱っていた。
タッカー氏は軍法会議で有罪を認め、15カ月の拘禁と懲罰的除隊を言い渡された。捜査協力を理由に、拘禁期間はその後6カ月減らされた。
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