ただし、影響があまりにも大きかったため、数日後には方針が一部修正され、「一定の原産地要件が求められるUSMCAを満たせば、現時点では関税ゼロのままアメリカ国内に持ち込める」とされました。
USMCAには、発効から6年後に協定の継続可否を判断する「見直し」プロセスが設けられています。その最初のタイミングとなった2026年7月1日の見直し会合で、アメリカ政府は協定の延長を見送りました。USMCAがただちに失効するわけではありませんが、これから毎年、協定の見直し協議が続くことになり、先行き不透明感が増しています。
今回、協定の延長見送りを決めたアメリカ政府は、USMCAの原産地規則のさらなる厳格化を求める姿勢を示しており、メキシコとは7月20日にも個別に協議を実施する予定となっています。一方で、アメリカとカナダは非公式協議にとどまっており、今後、3カ国間でUSMCAの期限延長に合意できるかは見通しにくい状況となっています。
今後の注目ポイントとしては、見直し作業の次の年度への持ち越しに加えて、USMCAを破棄し、アメリカとメキシコ、アメリカとカナダ、メキシコとカナダの二国間協定に切り替えるシナリオも視野に入れておく必要がありそうです。
「メキシコ迂回」をめぐって……
ただ、USMCAは単に3カ国の話にとどまりません。
実はカギになっているのは「中国メーカー」です。なぜ北米の話に中国がからんでくるのでしょうか。
トランプ政権発足後、米中関係が一段と悪化したのは皆さんもご存じだと思います。日本やほかの国以上に、中国からアメリカへの輸出品にかかる関税は大きく引き上げられました。そのため、中国企業の多くはアメリカに製品を直接輸出するのではなく、メキシコ経由でアメリカに製品を入れるようになりました。メキシコ経由で「迂回輸出」することで、関税の支払いを回避する狙いです。
当初、メキシコ政府はこの状況を黙認していました。しかし、USMCAの見直し交渉を控えた2026年1月、非FTA国から輸入する自動車や自動車関連部品、鉄鋼などを含む計1463品目に対するMFN税率を品目により最大50%に引き上げました。
このため、中国や韓国、タイ、インドネシア、インドなど、メキシコとFTAを締結していない国からの輸入に大きな影響が出ることになりました。
アメリカからの要請があったかどうかは明らかではありません。ただ、メキシコにとって、アメリカとの自由貿易協定を維持することは最優先課題です。

