NHK ONEの失敗とは「ネット対応の遅れ」という戦術レベルの問題ではなく、NHKが自分たちの新たな存在意義をどこに置くかという、もっと根本的な設計ミスだったことの証左だ。「NHK=放送」から一歩も出られていない。NHK ONEは自滅するために立ち上げたようなものだ。
このままでは、NHKは10年もしないうちに存在意義を失ってしまう。受信料が減っても財務的には持ちこたえられるだろうが、「どうしてNHKは存在するのか」に誰も答えられなくなる。
若い世代は「放送」がなくても困らない生活スタイルなので、チューナーレステレビをどんどん買うようになる。国産メーカーが同様の機種を売り出すのも時間の問題だろう。
NHKは今から10年後の自分たちのあり方を真剣に考えて世に訴える必要がある。そうしないともう間に合わない。
受信料を「公共メディア料金」に変えよ
筆者の考えはこうだ。受信料制度は、その使途を組み替える必要がある。
具体的には、現在の受信料を「公共メディア料金」に再設定する。この料金は、NHK・民放・新聞社が共同で利用するネットインフラの費用として使う。情報を安全に、かつ広く国民に届けるための土台、つまり認証基盤、配信網、フェイク対策のような共通インフラを、メディア横断で維持するための原資にするということだ。
民放と新聞を入れたのは、NHKの危機はそのままオールドメディア全体の危機だからである。団塊世代の退場は新聞社の経営を大きく脅かすもので、これから10年の間になくなる新聞が続出する。それなのに、新聞のデジタル版のほとんどは3行ほど読んだら登録を求める、ネットユーザーを遮断するスタイルだ。あれでは登録者が増えるはずがない。
ローカル局の危機はもはや聞き飽きた話題だろう。TVerは現状、関東キー局と関西準キー局のサービスであって、ローカル局に合うサービスになっていない。いずれはNHKと同様、ネットユーザーに向けたオンデマンドサービスを開発し、そこでコンスタントに番組を届ける努力をしないと維持できない。
新聞社もローカル局も数が減るにしても、なくなってはいけない。各地域のニュースをその地域に届ける仕組みがなければ、地域社会も経済も成り立たない。新しい形の情報伝達の仕組みを開発する必要があり、それはネットを通じてスマートフォンとテレビで見せるものになるはずだ。

