作品の配信前に行われたスペシャルイベントで、多部の姿を実際に見た瞬間、腑に落ちるものがありました。そのときの多部は、黒ベースのゆったりしたフォルムのロングドレスに、ぱっつん前髪はそのままに、黒髪を後ろでアップにまとめただけ。趣味の延長線上で占いをするという役柄を考えた上での衣装なのかもしれませんが、装飾も華やかさも、あえて排除した選択です。
同世代俳優の戸田恵梨香が、細木数子役を演じた「地獄に堕ちるわよ」のイベントで背中がぱっくり開いた大胆なドレスを選ぶ“女優らしさ”とは、対照的といっていいでしょう。多部が派手さのない衣装を迷いなく選べるところに、控えめだけれど静かな自信と余裕を感じました。
その立ち姿と同様に、発言も端的で的確、でも柔らかい。画面の中と地続きの佇まい、とでもいうのでしょうか。多部未華子という俳優は、凛とした美しさがあるのに、ちょっと手が届きそうな距離感を感じさせる。
イベント終了後に会場裏の通路で偶然すれ違いましたが、多部も杉咲も、何者かわからないであろう筆者に、感じよく会釈をしてくれました。そのさりげなさが、舞台上の姿とも重なっていました。
30台後半になった多部未華子の「武器」とは
平成黄金世代の中で多部が際立っているのは、人としての色気と知性を併せ持ち、どこかフランス人女優のような雰囲気があるところです。親しみやすさと憎めないギャップが、彼女の魅力になっています。
30代後半を迎えた今、その「つかみにくさ」がそのまま武器になっています。美しいけれど、完璧すぎない。日常にいなさそうで、でもどこかにいそうな女性を演じると、見ている側が勝手に自分を重ねてしまう。

