「残念ながら、値上げは避けられない」――アップルのティム・クックCEOが2026年6月、アメリカの経済紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のインタビューでこう語った 。発表の当日まで価格を一切明かさないことで知られるアップルのトップが、なぜわざわざ値上げを“予告”したのか。
その裏側では、AIが世界中のメモリを飲み込む異常事態が進んでいる。クック氏自身がこれを「100年に一度の大洪水」と表現したほどだ 。次に買うスマートフォンやパソコンの値段は、すでに静かに決まり始めている。ビジネスパーソンにとって、機器の調達コストをいつ・どう見積もるかという実務の問題でもある。
アップルCEOの異例発言の重み
クック氏はインタビューで「われわれに転嫁される値上がり分をできるだけ抑え、これまで顧客を守るために努めてきたが、もう限界に近づいている」と述べた 。原因として挙げたのが、メモリやストレージに使う半導体価格の急騰である。
これはアップルにとって、かなり重い発言だ。同社はこれまで、部品が値上がりしても自社で吸収し、製品価格をなるべく上げないようにしてきた。その我慢をトップ自らが「もう続けられない」と認めたことが、事態の深刻さを物語っている。
見逃せないのは、これがアップルだけの判断ではない点だ。一方でパソコン業界に目を向けると、世界シェア上位のデル、レノボ、HPの3社が2025年末から相次いで値上げを予告するという、めったにない事態が起きていた 。アップルの発言は、業界全体の流れに足並みをそろえる形で出てきたものといえる。

