[Book Review 今週のラインナップ]
・『格差の国の経済学 経済学者は世界をどう破壊し、もとに戻すために、毎日何をしているのか』
・『体の居場所をつくる』
・『AI人類学 生成AI時代の超倫理』
評者・BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎
主流派経済学者であり移民でもある ノーベル賞受賞者が抱く違和感
アンガス・ディートンは2013年出版の『大脱出』で、人類が貧困や病、短命から抜け出す過程を描いた。ただ、脱出はつねに不平等を伴う。先に脱出した者と取り残される者が生まれるからだ。日本でも話題となった20年出版の『絶望死のアメリカ』(妻アン・ケースとの共著)では、取り残された人々の苦痛が薬物やアルコールへの依存、自殺、寿命低下として噴き出すアメリカを分析した。
本書は、格差を分析対象としつつ、経済学が何を見落としてきたかを問う。
15年に「消費、貧困、福祉に関する分析」でノーベル経済学賞を受賞した著者は、スコットランドに生まれ、イングランドで学び、アメリカで研究を重ねた。家族で初めて大学に進んだ著者にとって、教育は単なる人的資本の獲得だけでなく、階層を超えるための経路でもあった。本書には、主流派経済学の内部深くに身を置く研究者の視線と、移民としてアメリカ社会を眺める者の違和感が同居する。
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