永田小学校では以前から、教員同士で授業を持ち合う教科分担を進めてきた。きっかけは、教科数が増える3年生や若手教員が担任を務める学年を、学年全体で支えられないかという課題意識だった。
体育や理科、図工などの授業を分担することで、複数の教員が学年の子どもたちと関わるようになり、自然と情報共有も進むようになったという。しかし、教科分担は理念だけでは実現しない。
「授業を持ち合おうという話は、理念としては簡単なんです。でも、教室の場所や時間割は誰かが組み立て直さなければなりません」
そこで重要な役割を果たしているのが、チーム・マネジャーである主幹教諭だ。永田小学校では、チーム・マネジャーが時間割や特別教室の割り当て、教員配置を調整しながら、教科分担が機能する環境を設計している。横浜市がチーム担任制の推進にあたり重視する「チーム・マネジャー」を、永田小学校では主幹教諭が担っている。
また、チーム運営を支える人材として、週5日勤務の非常勤講師の存在も大きい。永田小学校では、英語や図工、音楽などを柔軟に担当しながら、学年やチームの不足部分を補う非常勤講師が活躍している。
「本当に隙間に気がついて、そこを埋めてくれるんです」
広木氏は「チームの隙間部分を支えてくれている心強い存在」と信頼を寄せ、「まずその先生の時間割を決めてから、ほかを組み立てるくらいです」と話す。さらに広木氏は、学年全体を見る視点を持つ学年主任の育成にも力を入れている。今年度は7年目の教員2人を学年主任に登用し、同じ学年にベテラン教員を配置して成長を支えている。
「自分の学級を基盤にしながら学年全体を見る。そういう人材を育てることも、学校運営のカギだと思っています」
一方で、広木氏には変えたくないものもある。それが「担任」の存在だ。横浜市では、担任を一定期間ごとに交代する「ローテーション型」の実践も行われているが、永田小学校では「副担任型」で取り組んでいる。
「子どもには『自分の担任はこの先生だ』という安心感も必要です。チーム担任制によって、多くの担任が一人の子どもに関わることになります。複数の教員が学年全体の子どもたちに関わることになっても、子ども一人ひとりの『安心感』を大切にしていきたいと思っています」
チームで支えることと、担任が責任を持つこと。そのどちらかを選ぶのではなく両立させることが重要だというのが、広木氏の考えるチーム担任制である。
児童理解は「担任一人の仕事」なのか
横浜市が進めるチーム担任制は、単なる組織改編ではない。
その背景には、不登校の増加や子どもの多様化、教員不足といった課題の中で、「1人の担任がすべてを背負う学校」でよいのかという問いがある。
もちろん、チームで見ることが万能な解決策とは限らない。責任の所在をどう明確にするのか、保護者との連携をどう築くのかなど、今後検証すべき点もあるだろう。一方で加藤氏は、導入に対する現場や保護者の反応についてこう話す。
「18年度から教科分担制を段階的に進めてきたこともあり、教科ごとに指導する教員が入れ替わることについて保護者から戸惑いや不安の声はありません。チーム担任制の導入にあたっても、学年懇談会や学校説明会などで各校長がていねいに説明してきましたし、子どもたちも自然に受け入れています」
横浜市の挑戦は、児童理解を個人の力量や経験だけに委ねるのではなく、学校組織全体で支える仕組みへと転換しようとする試みだ。児童理解は担任個人の仕事なのか、それとも学校組織の仕事なのか。
「担任1人で抱える学校」が当たり前だった時代に、横浜市の取り組みはその前提そのものを問い直している。



