2年間の浪人生活を終えた宮下さん。浪人して良かったことを聞くと、「愛を知ったこと」。頑張れた理由については、「アメリカで持った志」「勉強自体が好きだったこと」「こういう自分でもいいと思わせてくれる周囲の方の支えのおかげ」と答えてくれました。
「今まで自分は自身の実力で生きてきたと思っていたのですが、その前に自分のことをどんな時も支えてくれる存在が周囲にこんなにいたんだなと、しみじみ感じさせられた2年間でした。それがなければ、冷めた関係性の中で人生の充実感や喜びも浅くなっていたんだろうなと思います。人生で一番大切なのは愛なんだなと、2浪の体験を通じて本気でそう思えるようになりました」
大学生のキャリア教育に関わる仕事に就く
東大に入ってからの宮下さんは、その実感を行動に変えていきます。
高校時代には物理の研究者を志していた宮下さんですが、「人との関わりを大切にしていけるような仕事に就きたい」と考え、大学生のキャリア教育や人生総論を扱う学生寮のサポーターとして就職し、現在もその活動を続けています。
また、自身が子ども時代に感じた思いの数々をnote記事でつづっており、2026年4月には、自身の経験をつづった書籍『統一教会二世の僕が、自宅浪人2年で東大に合格するまで: 壊れた先で、はじめて見えた自分の価値』も出版しました。
「宗教二世というバックグラウンドがあることで、制約や苦労があったのは確かです。周囲の二世の友達の話を聞いていても、大変だったという声は多いです。でも、自分がいた教会のコミュニティがすごく温かかったことも心に残っています。年上の社会人と広く関われて世界が広がったし、2浪で何も持たない立場になっても温かく受け入れてもらえた。
単純にすごくいいでもつらいでもない、自分の人生に深く位置付けられているものです。それがなければ東大を目指すことも、今の自分の考え方もなかったと思っています。現在も宗教二世ということで壁を作られることも多いですが、多くの人が感じてきたようなことを、自分も感じてきていたと思うので、本を読んで、共感いただけたら嬉しいと思います。宗教二世を超えて、同じ人間なんだなと思っていただけたら嬉しいです」
センター試験中の失禁、原っぱで涙を流した3月の桜の日、「2浪はニートと同じ」と自分を追い詰めた夜。そのどれもを経て愛とともに生きている宮下さん。浪人とは目先の点数を上げて大学への合格を目指す期間である以上に、自分が何者かを問い直す時間なのかもしれないと思いました。

