東洋経済オンラインとは
ビジネス #消滅寸前ビジネス

「教わると、そこが到達点になる」父は技を伝えなかった…「日本にたった1軒」金箔を支える和紙工房を継いだ男の流儀

8分で読める
横野和紙 上田手漉和紙工場
上田手漉和紙工場7代目・上田康正さん(写真:筆者撮影)

INDEX

400年以上受け継がれ、2020年にユネスコ無形文化遺産に登録された金沢の「縁付金箔」。その名を名乗るには、いくつかの条件がある。その内のひとつが、「岡山県津山市で作られる手漉きの箔合紙を使うこと」だ。

箔合紙とは、金箔と金箔の間に挟み、1万分の1ミリまで打ち伸ばされた繊細な箔が、互いにくっつくのを防ぐ和紙のこと。湿気にも強くなり、長期間の保存が可能になる。金箔の保存や運搬になくてはならない紙だ。

日本にたった1人の職人

この紙を漉ける職人は、いま日本にただ1人しかいない。岡山県津山市、横野滝のふもとで約220年受け継がれてきた伝統を背負う、上田手漉和紙工場7代目・上田康正さん(60)である。

注文は数カ月待ちで、売り上げの半分は海外だ。世界の需要は伸び続けている。なのに、継ぐ人はいない。
その上田さんは、自らの技術をこう評する。

「自分でもまだまだだと思います。目指す姿には到達していないでしょう」

35年間、和紙を漉き続けてきた上田さん(写真:筆者撮影)

筆者は上田さんの工房を訪れるため、自家用車を走らせた。住宅街を抜け、車が行き交う県道339号を山側に曲がる。進むにつれ、景色がどんどん山深くなる。車の窓を閉めていても、空気が澄んでいるのが伝わってくる。人影は見えない。だが、丁寧に田植えされたばかりの若々しい苗が輝く。

道幅が徐々に狭くなり、1台の車が通るのがやっとになってきた。両側から雑草が覆いかぶさる道をゆっくり車で進むと、道をふさぐ黒く長いヘビ。慌ててブレーキを踏み、ヘビが横断するのを待つ。

【写真を見る】「教わると、そこが到達点になる」父は技を伝えなかった…「日本にたった1軒」金箔を支える和紙工房を継いだ男の流儀(22枚)
2/5 PAGES
3/5 PAGES
4/5 PAGES
5/5 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ビジネス

人気記事 HOT

※過去1ヶ月以内に配信した記事の閲覧数