女性単独の主人公は初めて
約3年ぶりとなる村上春樹の新作『夏帆 The Tale of KAHO』は、以前の記事(村上春樹新作「文芸のプロ」が読んだ驚く深い感想 『街とその不確かな壁』は"期待通りの傑作"か)でも取り上げた前作『街とその不確かな壁』や、前々作『騎士団長殺し』のような重厚な本格小説ではない。
ただし、喜寿を迎えた後期高齢者・村上春樹の健在を示すリーダブルな佳作には違いない。
本作の初出は、
刊行にあたり作者は、計4回のシリーズに加筆修正して長篇の体裁を整えた。女性単独の主人公は初めてとの触れ込みであるが、問題はそこにはない。
重要なのは村上春樹が、この読者待望の新作で「ありくい」「シロアリ」という奇抜なキャラクターを、ヒロインとののっぴきならない関係で造形したことだ。

