長白山(白頭山)を水源に日本海まで約510キロメートルにわたって流れる豆満江。その下流は中国・北朝鮮・ロシアの3カ国が国境を接する、戦略的に極めて重要な地形である。とくに河口までの最後の約15キロメートルは、北朝鮮とロシアに挟まれた水域となっている。
豆満江を渡って日本海へ抜ける海上ルート(図們江出海権)は、中国の東北3省(吉林省・黒竜江省・遼寧省)にとって、唯一日本海へ直接つながる重要航路と位置づけられてきた。ここを通過して日本海へ抜けられれば、日本国内へのアクセスはもちろん、太平洋を横断してアメリカへも効率的に物資を運搬できる。
それだけに、吉林省や黒竜江省の中国人貿易商たちは、ロシアと北朝鮮の動きに対し「国益を損なっている」と不満を募らせているわけだ。
「水面から高さ20メートル」を提案したが…
中国国内向けの説明によれば、中国政府は「水面から高さ20メートル以上の橋へ改修するよう両国へ提案している」という。そんな最中に、すぐ隣にほぼ同じ高さの道路橋を新設されたのだから、現場の不満が爆発するのも無理はない。
2025年4月に新道路橋の建設が始まった当初、中国の動画共有サイトには国益を叫び、北朝鮮とロシアを糾弾する「愛国動画」があふれかえっていた。しかし、現在、それらの動画を確認すると、その数はぐっと減った印象を受ける。書き込まれているコメントもおとなしめだ。
これは推察だが、問題がまったく解決しないことで、それまで北朝鮮やロシアへ向いていた批判の矛先が、「両国に対して弱腰で不甲斐ない」と中国政府へ向き始めたのではないだろうか。その結果、当局による検閲や監視が強化され、動画やコメントが削除されている可能性が高い。
そもそも多くの中国人は、朝鮮・ロシア友情橋について「中国への嫌がらせのために意図的に低く架けられた」と認識している。北朝鮮やロシア側からすれば、ここを通過するのが貨物船だけでなく、将来的に中国人民解放軍の艦艇や潜水艦が通過するようになれば、両国の地政学的な優位性が揺らぐことに直結する。ゆえに、これらの低い橋は中国に対する警戒の象徴とも言えるのだ。
もし将来、中国人民解放軍の艦艇や潜水艦がこのルートを経て日本海で展開されることになれば、日本にとっても監視警戒を強化せざるをえず、海上自衛隊の体制見直しに迫られる。決して他人事ではない。
遼寧省出身で埼玉県在住の中国朝鮮族は、「ロ朝の橋の問題を棚上げにしてでも、対米政策において北朝鮮との関係改善・強化を優先させたのでしょう。今や経済的な影響力が小さくなった中国東北地方の不満の声は、抑え込まれたのだと思います」と語る。

