住宅が立ち並び、曲線を描く道路や緑道、公園もある。落ち着いたまちなみの中に、鳥の声が響き、高原にいるかのような気分になった。
“山梨のマチュピチュ”とも呼ばれるこの場所の正体は、積水ハウスの分譲地「コモアしおつ」。開発面積は東京ドーム約17個分にあたる80.2ha、総区画数1412区画、計画人口約6000人のまちとして、1991年に誕生した。
山梨県東部の山が連なる地に、なぜこれほど大きな住宅地ができたのか。斜行エレベーターはどのような背景で設置されたのか。かつて積水ハウスでコモアしおつの開発に携わり、このまちで暮らす松田健司さん(67歳)と、積水ハウスの関係者に話を聞いた。
丘陵地ならではの眺望や緑を生かした、ほかにない住宅地
斜行エレベーターについて触れる前に、まずは「コモアしおつ」の誕生背景から振り返ってみよう。
ニュータウン計画には、バブル期の地価事情が深く関わっている。当時、東京圏を中心に都市部の地価は高騰し、住宅需要は都心近郊からさらに外側へと広がっていた。八王子を越えた山梨県東部も、通勤圏の延長として見られるようになっていた。
八王子から甲府方面へ30分ほど。四方津駅の北側に広がる丘陵地でも、効率を重視した碁盤の目のような宅地割りの開発計画が進んでいたという。こうした状況の中、80年代後半に、積水ハウスが一帯の開発に乗り出した。
山林や丘陵地を住宅地として開発するため、現地では大規模な造成が行われていたという。造成工事と並行し、まちの設計やインフラの整備も進められていく。

