昨年12月のNetflixの「合同インタビュー」では報道陣から「今回、契約していない人からWBCを見ることができないという声が上がっているが」という質問が出た。Netflix側は「全国でパブリックビューイングを実施する」と答え、事実、WBC出場選手の地元を中心に多くの地域でパブリックビューイングが開催されたが、それでカバーできるものでは当然ない。
日本も「ユニバーサル・アクセス権」の導入は必須
Netflixは、コンテンツを「有料視聴させる」ことがビジネスモデルの基本だ。「お金を払わない人」はそもそも顧客ではないし、苦情をもらう筋合いもない。MLBサイドも今回のNetflixの数字を高く評価しているとみられる。アメリカではMLBの野球中継は「有料視聴者」が基本だから、日本でも「お金を払って視聴するスタイル」が一定程度受け入れられたことは、大きなプラス材料だと考えているだろう。「ユニバーサル・アクセス権」の議論は、彼らにとってはあくまで日本の「国内問題だ」という受け止めではないか。
スポーツ放送に関する「ユニバーサル・アクセス権」の代表的な制度として知られるのが、イギリスの制度だ。アメリカのメディア王ルパート・マードックが、サッカーのワールドカップなどの人気スポーツの放映権の買い占めに乗り出した際に、イギリス政府が「ユニバーサル・アクセス権」を根拠として、サッカーやオリンピック、テニス、競馬(ダービー)などの国民的な注目を集めるスポーツ大会について、無料で広く視聴できる機会を確保する制度を整えた。
以後、EU各国にもこの動きは広がり、世界最大の視聴者を集めるサッカーのワールドカップは、これらの国では無料放送で視聴できる機会が確保されている。アジアでは韓国が2007年以降、ワールドカップ、WBC、オリンピックなどについて、一定以上の世帯が視聴可能であることを求める制度を導入した。しかしすでにテレビコンテンツの有料視聴が一般化していたアメリカでは、こうした意味での「ユニバーサル・アクセス権」は一般化していない。
こうして見ていくとテレビの有料視聴が定着していない日本では、「ユニバーサル・アクセス権」の導入は必須のようにも思われる。しかし、「ユニバーサル・アクセス権」に関する制度が導入され、2029年または2030年にも想定される第7回WBCが、再びテレビ朝日やTBSなど「民放地上波」での無料視聴に戻ることは、果たして手放しで喜べる「良いこと」なのだろうか?
