売場面積5.05㎡、1.53坪という小さな売場に、松屋フーズは相当な情報量を詰め込んでいる。ブラックとウッド調ブラウンを基調にした店舗デザイン、金色のロゴ、ショーケースに並ぶ商品サンプル。容器はファルカタ材のわっぱ、掛け紙付き。接客は松屋PREMIUM専門の接遇研修を修了したスタッフが担う。
通常の松屋の店舗と並べれば、別ブランドに見える。しかし商品を手に取れば、牛めしのタレの記憶が戻ってくる。この「外見は百貨店、中身は松屋」という作りが、松屋PREMIUMの核心だ。
外食の松屋が、中食市場に入る意味
松屋PREMIUMが登場した背景には、中食・惣菜市場の拡大があると推測する。日本惣菜協会によれば、24年の惣菜市場規模は前年比102.8%の11兆2882億円で、3年連続で10兆円を超えた。
ただし、この数字は「惣菜を買う人が増えた」という話だけではない。同協会も指摘するように、価格上昇による名目拡大の側面がある。実質的な購買量の増加とは別に、値上げにより、1品あたりの単価が上がることで市場規模が膨らんでいる。
だからこそ、百貨店の中食売場で問われるのは「安さ」ではなく「ここで買う理由」だ。
専門店ブランドが中食売場に展開する例はすでにある。ただ、松屋PREMIUMが一歩進んでいるのは、より日常食のイメージが強い牛めしチェーンが、デパ地下で売れる形にいつもの松屋を変えている点にある。神戸牛牛めし1390円、創業ビーフRichカレー1050円は、「松屋らしさ」という文脈を持ち込みながら、百貨店で成立する価格と見せ方に変えているのだ。
外食チェーンが「外食以外の売場」で戦う。その意味は、単なる売り上げの多角化にとどまらない。いつもの松屋が、外食以外の売場でどこまで通じるかを確かめることでもあるのだ。
