正しい情報提供が少ないことによるズレ
そもそも、なぜクロマグロの回遊量が増えてきたのでしょうか。これは、サケ・サバ・イカをはじめ、漁獲量が減ると責任転嫁の理由として頻繁に登場してくる、「海水温上昇」「外国船が悪い」「黒潮大蛇行」などの影響ではありません。影響がないとは言いませんが、そういうことではないのです。
太平洋クロマグロは2014年にIUCNレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類相当の危急種とされ、2021年には準絶滅危惧に引き下げられました。初期資源(漁業が始まる前の資源量)の2割を切ると資源崩壊のリスクが非常に高い状態といわれていますが、その水準を大きく下回り親魚量が2.6%程度になってしまっていたのです。そして資源管理が始まったのですが、当初はひどいものでした。
2017年には北海道の定置網で枠を大幅に超えて水揚げしてしまい、その分が他の漁業者の枠削減にもなり問題になりました。枠をオーバーして獲り続けたり、枠を超えると海上投棄したりするなどの話も出ていました。そして、近年になってようやく、枠を超えたら逃がす習慣が日常化してきています。しかしながら、「なぜ逃がさなければならないのか?」といった考えは根深いかもしれません。
これはひとえに、これまでの資源管理に関する正しい情報の不足が原因です。数量管理による資源管理は当然のことですが、逃がすという方向転換に現場で対応している漁業者の皆さんは大変です。
クロマグロは、太平洋でも大西洋でも漁獲されます。そして同じように、大西洋では産卵場である地中海に回遊してくる産卵期の漁獲(加入乱獲)で資源が激減しました。大西洋では30キロ未満の幼魚は原則漁獲禁止です。
一方、上のグラフをご覧ください。太平洋(日本)では、産卵期に回遊してきた親だけでなく、成魚になっていない30キロ未満の幼魚まで漁獲し続ける成長乱獲によって、加入乱獲と成長乱獲の挟み撃ちとなり、必然的に資源が一時激減してしまったのです。尾数で見ると、未成魚漁獲が9割(93%・2013〜2022年の平均)です。

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