野球名鑑から始まり、2ちゃんねるの受験サロン板で熟成された「データを集めて深掘りする」という性質。それは、日本の中学校では「ひろゆきみたいな子」とけむたがられ、メガバンクではハンコの向きをめぐって壊された。
だがそれは、伊藤滉一郎さんという人間の中核にずっとあり続けた性質でもあった。
「いま自分がいるのは、絶対に浪人のおかげだと思います。ちょっとくらい遠回りしてもなんとかなると思えるようになった。レールから外れるのが、怖くなくなったんです」
そして彼は、こう続けた。
「現役で受かっていたら、きっと僕は学歴にこだわる『学歴厨』にはなっていません」
打率と防御率を集めていた小学生は、いま、日本中の高校と大学の進学実績を独自のデータベースで分析し、毎晩Xに向かって何かを書いている。少年時代の「ハマり癖」という彼の偏りは、職場では呪いだった。だがインターネットの上では、それが武器になった。
「学歴厨」が作った自分の‟偏り”を持ち寄れる場所
小さいころに頭がよかった子の行き先は、大企業や研究者、官僚ばかりではない。
社会に居場所がなかった子どもが、自分の偏りを持ち寄れる場所を、自分で作ってしまう。じゅそうけんという人物は、その一つのあり方なのかもしれない。野球名鑑のページをめくっていた指は、いまも、止まらずに動き続けている。
