同じ時期には、西日本シティ銀行の行員が勤務中の支店内を「BeReal」(ビーリアル)に投稿し、ホワイトボードに書かれた顧客の氏名が流出した事案や、メーカーの新卒社員が機密保持誓約書を含む入社書類をXに投稿した事案、仙台市の小学校教員による同僚の個人情報漏洩も報じられている。
これらに共通するのは、外部からの不正アクセスやサイバー攻撃ではなく、社内の人間などによるSNS投稿だという点である。BeRealやInstagramのストーリーズは24時間で表示されなくなるが、その間にスクリーンショットを撮られた場合、どこかに画像は残り、ほかのSNSへ転載される可能性がある。
こうした社内情報流出を個人の問題として対応するだけでは、今後も繰り返されていく。その理由と対策について解説する。
BeRealやストーリーズに若者が惹かれる理由
大人世代にはなじみが薄い「BeReal」だが、いったいなぜ若者を惹きつけるのだろうか。リスクを理解する前提として、まずどんなものかを押さえておきたい。
BeRealは、フランス発のSNSだ。ユーザーの約9割がZ世代(14歳〜27歳)で、名前が示すとおり「ありのまま」をシェアすることがコンセプト。最大の特徴は、投稿のタイミングを自分で選べないことだ。
1日1回、アプリからランダムな時間に「BeReal Time」と呼ばれる通知が届き、それを合図に写真を撮影して投稿する。通知から2分以内の投稿が基本とされ、遅れると「遅れて投稿」と表示される仕組みになっている。また、投稿するまで友達の投稿を見ることができない。
反対に、2分以内に撮影すると「ボーナス」として複数の投稿が可能になる。つまり、友人と「今」を分かち合い、できれば多くの投稿を行いたい場合、2分以内のルールに従うことになる。
投稿スタイルも独自だ。アプリのシャッターを切ると、インカメラとアウトカメラが同時に作動し、自分の顔と、目の前の風景の両方が一枚に収められる。スマホに保存した画像は投稿できず、アプリで加工することもできないため、モザイクや美顔加工もしていないありのままの様子がシェアされる。
そこで、顔を手で隠したり、天井や床を写したりといった工夫を凝らすが、隠しすぎると友達の興味を引く投稿にならないため、結局はほぼそのまま見せることになる。
友達のありのままを見るのは楽しいものだ。普段過ごしている部屋、家族と食事している様子、通勤や職場の風景など、友人の知らない一面を垣間見ることができる。楽しい熱狂に参加するために、自分も2分以内に友達に喜んでもらえるような投稿を心がける。
このゲーミフィケーションが、そのまま情報漏洩のリスクに直結する。通知から2分という時間制限によって、背景をじっくり確認する余裕はなくなる。「ありのまま」を良しとする文化は、本来撮影してはいけない場所や状況でも積極的に撮影してしまう。つまりBeRealは情報が漏れやすい構造を、仕組みとして抱えているといえる。
ここまではBeRealを見てきたが、冒頭で触れたJCBの事案はBeRealではなくInstagramのストーリーズで起きている。BeRealのユーザーは若年層がほとんどを占めるのに対し、Instagramは全世代に広く普及しており、新人を含むZ世代だけの問題に留めておけない。
