学校の責任範囲をめぐる議論のなかで、近年とくに難しい論点として浮上しているのが、寮や合宿、長時間拘束される部活動といった「閉じた空間」をめぐる責任の所在です。教室での出来事であれば、何が起きたかを目撃した教員も多く、責任の範囲もある程度は明確になります。しかし生徒が24時間生活する寮や、夜遅くまで続く合宿のなかで起きたことは、誰にとってもブラックボックスになりがちです。
実は静かに減っている「学生寮」
意外に思われるかもしれませんが、学生寮はいま、全国的に減少傾向にあります。
大学レベルでは、京都大学や東北大学、金沢大学といった国立大学で寮の廃止や縮小の動きが相次ぎ、短期大学でも一定割合が寮の廃止を予定していることが報告されています(日本学生支援機構(JASSO)「文部科学 教育通信 No.423『学生寮の現在』」)。
理由は単純ではありません。建物の老朽化、入寮希望者の減少、運営コストの問題――そのどれもが背景にあります。しかし、もう一つ見落とせない要因として、「寮を運営すること自体が、学校側にとって極めて重い責任リスクを伴うようになってきた」という事情があります。何かが起きたときに、学校が引き受けなければならない範囲が広がりすぎている。そう判断する学校が、確実に増えています。
では、寮はいったいどこが問題なのでしょうか。象徴的な事例から、その構造を見てみたいと思います。

