寮の問題は、部活動の強化という別の論点と分かちがたく結びついています。強豪校のなかには、「寮がなければ強いチームは作れない」という前提のもとで運営されてきた組織が少なくありません。生徒の生活時間そのものを部活動に最適化することで、競技力を底上げするという考え方です。実際、寮の廃止を検討した学校で、現場の指導者がこれに反対するケースもあると聞きます。
しかし、そもそも「強さのために生活空間まで囲い込む」という発想は、コンプライアンス意識が高まる現在において、すでに持続可能性を失いつつあるように見えます。スポーツ庁が示した「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」(2022年策定)は、休養日の設定や活動時間の上限を明示し、生徒の生活時間と部活動の境界を引き直す方向に動いてきました。
部活動の地域移行が進められている背景にも、教員が私生活の時間まで指導に費やすことの限界、そして閉じた指導空間が抱えるリスクに対する社会的認識の変化があります。寮という24時間型の管理空間は、こうした流れと逆方向の存在であり、今後ますます運用が難しくなっていくと予想されます。
「責任を引き受けない」という選択肢
先述の寮の事例で、その学校が最終的に下した判断は、寮そのものを廃止するというものでした。長年、競技強化を支えてきた制度を手放すという重い決定です。
しかしこの判断は、ある意味で合理的な帰結でもあります。実質的に管理が不可能な空間について、形式上だけ責任を引き受け続ければ、何か起こるたびに学校はゼロから百までを問われる。であれば、その空間自体を持たない、という選択をするほうが、学校の存続にとっても、生徒の安全にとっても、結果的に望ましいかもしれない。

