「せっかく商業出版するとなっても、出版社から売るために内容を変えたほうがいいと説得される場合があります。すると仮に売れなかったとき『出版社のせい』にしてしまいがち。自分の本なのに、どこか他人事になってしまうんです。
自費出版に関しても、編集者目線で『もう少し手を加えれば、もっと読者に届くはず』と思うことがありました。でも、著者の意向を優先しすぎて、自己満足で終わってしまう場合も。もっと多くの人に届くはずなのに、あと一歩手をかけることができない。著者も出版社も、本に関わる全員が、『大切な本を世に送り出すんだ』と当事者意識を持って取り組めるようにしたかったんです」(平田さん)
ハレル舎の掲げる共創出版は、書店流通の仕組み自体は商業出版と同じだ。大きな特徴として挙げられるのが、制作段階では著者と出版社が対等に意思決定を行う点だ。制作費は双方で負担し、内容の決定も共同で行う。一定数売れた場合、著者に印税も支払われる。つまり、リスクも責任も分かち合う代わりに、意思決定も共有する仕組みだ。
もちろん関係者全員が責任感を持って取り組むのは、決して楽なことではない。著者と出版社の考え方の相違から実現しないこともある。制作が始まっても、理想と予算の間で調整を迫られるものも少なくない。さらには、想定以上に制作に時間がかかり、売り上げが立たない場合も……。課題は山積みだが、それでも最終的に「これがこの本の完成形だ」と全員が感じる瞬間があるという。
これまで世に出した本は3冊。著者と出版社が力を合わせてつくった本たちは、どれも最高の出来だという。
「不思議なことに、こうして熱意を持って本づくりに取り組んでいると、著者も自分の作品をよりよくしたいという、似たようなこだわりを持った人が集まってくるんです。私たちは、著者の思いをできるだけ尊重して本をつくりたいと思っています。一方で、言いなりになるわけではありません。100%希望どおりにはつくっていないのに、結果的に著者から『私が、言いたかったのはこういうことだ』と言われることも。著者自身も気づいていない、本当に伝えたいことを見ているのかもしれません」(春山さん)
「本は商品ではなく文化」という信念
