「本を流通させるためには、トーハンや日販などの大手取次(卸問屋)と取引する必要があります。小さな出版社では手続きも難しく、相手にされないのでは……?と懸念していました」(平田さん)
そんなとき、ある転機が訪れた。あるフェアに行った際に、独立出版社の関係者と出会ったのだ。出版社を始めたいと伝えたところ、手続きや、起業の経緯について丁寧に教えてくれたという。
小さな出版社とも取引をする中小取次や、書店と直取引する方法もあると知り、平田さんの迷いは払拭された。春山さんと一緒に出版社を立ち上げる決意をしたのだ。
「経営についての知識もなかったのに、思い切った行動だったとは思います。不思議なことに、周囲に反対する人が誰もいませんでした。みんなが応援してくれたことも、一歩を踏み出すことの後押しになりました。ハレル舎の本は、どれも商業出版の本と同じように、取次を通して一般の書店に流通しています」(春山さん)
新しい出版の形「共創出版」とは
ハレル舎が掲げる「共創出版」は、従来の出版モデルに対する違和感から生まれた。これまで出版業界で本を出すには、大きく分けて「自費出版」と「商業出版」のふたつの方法があった。
商業出版では、出版社が費用を負担する代わりに、売り上げを重視する。その結果、内容が市場に合わせて調整されることも少なくない。
一方の自費出版では、著者の自由度は高いが、編集的な介入が弱くなり、作品の完成度が十分に引き上げられない場合もある。
編集者として、商業出版にも自費出版にも関わってきた平田さんは、本づくりの過程のなかで、責任の所在があいまいになることが気になってもいた。
