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部員わずか3人で廃部寸前だった八ヶ岳山麓の合唱部、救ったのは移住音楽家—年400時間を注いだ部活動「地域移行」の現場

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移住してきた音楽家が地元中学校の合唱部を指導、活気に満ちた練習を可能にしている(写真:筆者撮影)
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指導を始めて5年目、根本さんにも部活動指導員報酬がつくことになった。その後、合唱部が部活動地域移行のモデルとして選ばれることになっていく。隣の原村の生徒と共に地域の合唱クラブとして発足することが決まった。

講師費用は部活動指導員報酬の時と同じで、時給1600円。この地域の時給としては安くはない金額だが、音大出のプロ講師としては決して高くはない。

だが、根本さんは子どもたちのために、このクラブでの講師を続けている。なぜ、そこまでして中学生の指導をしているのか。

「実は自分が中学生の頃に音楽をやめようと思ったことがあり、学校の音楽の先生や、ピアノの先生の言葉に支えられたことがあったんです」

当時、この2人が「あなたには才能がある」「練習しなくてもいい、週に一度でいいから続けなさい」と言い続けてくれていた。

「中学の頃は反抗期もあって、〝何を言ってるんだこの人は〟くらいにしか思えなかったのですが、高校生になり、将来を考えるとき、この2人の先生の言葉にすごく支えられたんです。

中学生という心身が大きく変わる時期に、専門的な指導を受けられることで人生が変わっていったり、自分の夢を掴んでいく子がいると思うんです。こうして専門的に音楽教育を受けさせてもらった者として、未来に向かう子どもたちを支える責任があるのではないかと思いました」

生徒たちとの関わりを通して、実は自分も音楽の学びを深めていることに気がついたという根本さん。

「子どもたちが僕にサプライズで絢香の『にじいろ』という曲を歌ってくれたことがあったのですが、それがすごく温かくて、音楽ってこんなに温かいんだってことを、子どもたちが教えてくれました。その時にこう感じたんです。僕が子どもたちに教えてるんじゃなくて、お互いに音楽を学び合っているんだなって」

指導する根本さん(右から2人目)(写真:筆者撮影)

地域に開かれたクラブへ

現在、クラブには富士見中学校の生徒6人と原村にある原中学校の生徒4人が在籍、週3~4日のクラブ活動で歌声とチームワークを磨いている。

スポーツなら地方在住でもオンラインで優れた指導者から指導が受けられる機会があるが、空気を伝って人に音色が届く音楽の場合、対面でやるからこそ生み出される音色の変化がある。

取材で訪れた日も、Nコン出場に向けて熱心に練習をする生徒たちの姿があった。

「コンクールには30人規模の学校も出場します。それに比べると、私たちは10人しかいません。ピアニシモのところを本当に小さく歌ってしまうと、大きな会場では聞こえません。ピアニシモでも声を前に届ける気持ちを忘れずに出してください」

根本さんからのアドバイスを真剣に聞く生徒たち。まだ入部したての新入生も、先輩からアドバイスをもらいながら、懸命に練習についていく。

Nコンで10人のハーモニーがどんな結果を生むにしても、本気で取り組んだ経験と、本気で自分たちを指導してくれる大人との出会いは、彼らの人生にとってかけがえのない経験になるだろう。

廃部寸前だった小さな合唱部は、地域に開かれたクラブへと姿を変えた。そこには、制度だけでは生まれない、地域と人の力があった。

【あわせて読む】「音楽をやりたいならしがみつきなさい」八ヶ岳に移住→崖っぷちだった若手音楽家を救った106歳おばあさんの言葉

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