つまり、現代において読書のハードルは、大人にとっても非常に高い。スマホ・SNS・動画配信という最強の刺激物に対抗して本のページをめくる、というのはもはや一種の修行に近い。
いわんや子どもをや、である。子どもは、そもそも本の「楽しさ」自体を知らないことも多い。本の面白さに気づくまでには相当な時間がかかる。
そこでこの記事では、もう一度本を読めるようになる方法を、私自身の試行錯誤も交えながらお伝えする。少し先回りして言っておくと、現代の子どもの「読めなさ」は、保護者世代が想像しているよりはるかに根深い。
私たちが子どもの頃、暇つぶしの選択肢は限られていた。テレビ、漫画、ゲーム、本。せいぜいこの程度である。その中で本を選ぶことは、決して特殊な娯楽ではなかった。ところが今の子どもは、1秒で次の刺激に切り替えられる世界に生きている。
TikTok、YouTube Shorts、Instagramのリールなどのショート動画は、5秒経たないうちに次のコンテンツへ飛び、気に入らなければスワイプ一発である。
「自分が子どもの頃は本を読んだのに」と言うとき、その「自分が子どもの頃」と今とでは、可処分時間に競合する刺激の量と密度が文字通り桁違いに違う。この前提を踏まえないと、子どもへのアドバイスは全部空振りに終わる。
処方箋1. 気軽に読めるものより「短くて難しいもの」を
「最近本が読めないから、もう少し気軽な小説でも買おう」
本屋で多くの大人がこう考える。ビジネス書であれば要約系のもの、わかりやすいと評判の入門書、図解多めの新書。そしてエッセイや軽めの小説。本屋に行けばそういう本が平積みされているし、実際に私もそう選んできた。
しかし、この戦略は根本的に間違っている。なぜなら、気軽さや簡単さで、本がスマホに勝てるわけがないからだ。
文体がやわらかいエッセイ200ページと、TikTokの15秒動画。「気軽さ」で勝負したら、徒競走で新幹線に挑むようなものである。現代において「気軽さ」を本に求めてはいけない。これは初めから負けが決まっている戦である。
