東洋経済オンラインとは
ビジネス

「圏外」を救うStarlinkが稼ぐ巨額マネー、SpaceX上場で見えた"ロケット企業ではない"実像とAIへの大賭け

9分で読める
地球低軌道で衛星を放出するStarship
地球低軌道で衛星を放出するStarship。SpaceXは約9600基の衛星網で世界の通信を支える(写真:SpaceX)
  • 石井 徹 モバイル・ITライター
2/6 PAGES
3/6 PAGES

ただし、その土台のStarlinkにも死角はある。契約者は2023年末の230万件から毎年ほぼ倍増し、2026年3月末には1030万件に達した。だが1契約あたりの月間売上(ARPU)は、2023年の99ドルから66ドルへと下がっている。新興国へ展開を広げ、安い料金プランで契約数を稼いできた裏返しだ。契約者数の伸びがARPU低下を上回るうちは利益は伸びるが、単価の下落が止まらなければ、AI投資を支える原資の伸びは鈍る。

なぜAI企業になったのか xAIとXの統合

ロケットと衛星の会社が、これほど大きなAI赤字を抱えるようになったのはなぜか。きっかけは、2026年2月のxAI(エックスエーアイ)統合だ。

マスク氏が率いるこのAIスタートアップは、対話型のAI「Grok(グロック)」を開発している。Grokは、文章で質問すると答えを返す生成AIで、米OpenAIの「ChatGPT」や米Googleの「Gemini(ジェミニ)」と同種のサービスにあたる。マスク氏はGrokを「真実を探求するAI」と位置づけ、これらの先行サービスに対抗する存在に育てようとしている。

このxAIは、統合より前の2025年3月、旧Twitterの「X(エックス)」をすでに傘下に収めていた。つまりSpaceXは、xAIごとXも取り込んだことになる。

S-1ではこれらを実質的に同じグループ内の取引とみなし、xAIとXの過去の業績まで遡って連結決算に取り込んだ。S-1が映す「SpaceX」は、もはやロケットと衛星通信だけの会社ではなく、GrokとXまで抱えた複合企業の姿になっている。

なぜAIスタートアップがSNSを抱えるのか。狙いはS-1にはっきり書かれている。Xは、Grokを賢くするためのデータ源であり、同時にGrokを多くの人に届ける場でもある。

Xに毎日投稿される約3億5000万件の書き込みが、最新の情報としてGrokの学習に流れ込む。マスク氏は、この生のデータにアクセスできることこそがGrokの「鮮度」を支える強みだとみる。Starlinkで稼ぎ、宇宙にAIの計算インフラを築き、XのデータでAIを磨く。ばらばらに見える事業を一つに束ねる理屈が、ここにある。

4/6 PAGES
5/6 PAGES
6/6 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ビジネス

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象