この物量が、Starlinkを「競合なき」存在にしている。低軌道に張り巡らせた通信網でも、はるか上空の静止軌道を回る従来型の衛星通信でも、Starlinkと同等のサービスを同等のコストで提供できる事業者は、現時点で見当たらない。
その結果、Starlinkを中核とする通信セグメントは、SpaceXで唯一しっかり稼ぐ事業に育った。2025年の通信セグメントは売上高113億8700万ドル、営業利益44億2300万ドルを記録した。売上高は前年から49.8%、営業利益は120.4%伸びている。衛星をいったん軌道に上げてしまえば、契約者が増えるほど利益率の高い月額収益が積み上がる構造だ。
Starlinkで稼ぎ、AIが食う
ところが、会社全体の決算は赤字だ。2025年通期の連結売上高は186億7400万ドル、営業損益は25億8900万ドルの赤字だった。稼ぎ頭がこれだけ伸びているのに、なぜ赤字なのか。理由は、Starlinkで稼いだ利益を別の事業がのみ込んでいるからだ。
最大の赤字源はAI事業だ。2025年のAIセグメントは売上高32億100万ドルに対し、営業損失は63億5500万ドルにのぼる。売上の2倍近い赤字を出している。次世代の巨大ロケット「Starship(スターシップ)」を開発する宇宙セグメントも、2025年は6億5700万ドルの営業赤字だった。
設備投資の偏りは、さらに極端だ。2026年1〜3月期の設備投資は、宇宙セグメントが10億5200万ドル、通信セグメントが13億3200万ドルだったのに対し、AIセグメントは77億2300万ドルに達した。3カ月で、宇宙と通信を合わせた額の3倍以上をAIに注ぎ込んでいる。Starlinkというキャッシュエンジンの上に、巨額のAI投資が乗っている構図だ。
