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「"豆ご飯用の豆"がない?」関西出身の生活史研究家が東京で気づいた"ご当地食材"の地域差〜47都道府県おいしいもの巡り

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うすいえんどう
「うすいえんどう」(写真:プロモリンク / PIXTA)
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関西では市街地から山が見え、列車や車で旅に出ればたいていトンネルを抜け山道を通るのに対し、東京から茨城へは山を掘ったトンネルを一度も通らず行けてしまう。瀬戸内でおなじみの段々畑や棚田にも縁がなさそうで、広大な田畑が広がる風景はうらやまし過ぎる。

茨城の農業について調べたら、やはりこの平坦さが武器でもあるそうで、2024年の農業経営体数は全国一位で、総農家数では2位。2021年の農業産出額と2024年の耕地面積も全国3位と、国内トップクラスの農業県だった。

春を告げるうすいえんどう(和歌山県)

「豆ご飯用の豆が店頭にない」と気づいたのは、うかつにも東京に来て15回目の春だった。関西人にとって「豆ご飯用の豆」は「グリンピース(実エンドウ)」ではなく、その改良品種の「うすいえんどう」である。

それが関西ローカルの豆ということも、そうした名前だと知ったのもその後。テレビの情報番組で、欧米から入ってきたグリンピースを、和歌山の農家がご飯に合うよう品種改良した、と紹介していた。

東京では一般的でない、と気づかずに14年も過ごせたのは、趣味で野菜を育てていた義父から送られてきた期間があり、その後は近所の八百屋でも毎年買えたからだ。

改めて調べると、明治時代にアメリカから入ってきたエンドウを、最初に栽培したのは大阪府羽曳野市碓井地区の農家だった。そのエンドウを導入した和歌山県では、温暖な気候が栽培に向いていたこともあり、品種改良をくり返し、生産者が増加してグリンピース日本一の産地に成長していた。

うすいえんどうは、グリンピースと何が違うのか。15回目の春、東京に来て2度目の引っ越し先の町の八百屋やスーパーで扱いがないとわかり、鹿児島県産のグリンピースを使ってみた。うま味が足りないといけないので、干しエビを加えてご飯を炊く。しかし、口にした夫と私は、「ちょっと違う」「ご飯になじんでない」「エビを入れても、もの足りない」と首をかしげた。

うすいえんどうは、莢(さや)が薄緑色だ。グリンピースやスナップエンドウ、絹さやが鮮やかな緑なのと対照的。中の実も薄緑色で一見地味だが、ホクホクとした食感で口に入れるとホロリと崩れ、ご飯によくなじむ。

うすいえんどう *写真はイメージです (写真:プロモリンク / PIXTA)

一方、青々としたグリンピースは洋風の濃い味で、スープや煮込み、炒めものに合うと私は思う。しかし、ご飯に炊き込むと自己主張が強く、なじんでくれないのであまり合わない。バターで炒めるピラフなら合うのだが。

SNSに嘆きの投稿をすると、和歌山県のおすすめの生産者を紹介してくれる人がいて、翌年から注文できた。あれは2019(令和元)年だった。時期を明確に覚えているのは、最初の品が届いたのが2020年の4月だったからだ。コロナ禍でトイレットペーパーやマスクが店頭から消え、先が見えず不安だらけだった中、和歌山から到着したうすいえんどうの箱を開けホッとした。

しかも、生産者の方がわざわざ電話で、「このえんどうの莢は農薬がかかっていないから、10分ほど煮出してその汁をご飯と一緒に炊くと、うま味が増しますよ」と教えてくれた。

毎年、春が近づいてきたと気がついた頃からその生産者のウェブサイトをチェックし始め、予約が始まったらすぐに注文をする。しかしある年、バタバタしていたせいで予約を忘れ、サイトを開いたときには完売していた。

仕方がないので「食べチョク」にアクセスし、愛知県の生産者が販売しているのを見つけて注文する。しかし、この味は若干グリンピース寄り。在来野菜では、特定の地区でしか同じ形や味わい、柔らかさにならない野菜がある。隣接する地区でつくっても、同じサトイモやナスにならない。

うすいえんどうも、和歌山県中部の気候や土壌でなければ、同じような味わいにならないのかもしれない。ちなみに、和歌山県産のうすいえんどうは、2006(平成18)年に「紀州うすい」の名が地域団体商標になっている。

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苦労をした時期があっただけに、うすいえんどうが手に入ると毎年うれしくなってしまう。運よく春先に関西へ行ってスーパーに寄れたら、まとめ買いして帰る。そして在庫がなくなるまで、毎日毎日ひたすら豆ご飯を炊いて食べる。

たまに、スープや炒めものに加えることもあるのだが、他の素材に埋もれて独特の食感とうま味を感じられなくなる。「それではもったいない!」と、次の日から再びご飯に入れる。私にとって、うすいえんどうの豆ご飯は、待ちわびた春を感じる食卓の必須アイテムなのである。

【本記事では、秋田・茨城・和歌山の食材を取り上げました】

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