もう1つの問題は、開発を担当するのが三菱重工など装甲車両メーカーではなく、消防車や民間防弾などを担当するいわゆる特装車両メーカーが行うことだ。
海外では野戦で使うことを前提とした特装車両が多数存在して、実戦での使用も含めて多くの知見とノウハウを蓄積している。だが日本にはそのようなメーカーは存在しない。見よう見まねで作った役に立たない車両ができあがる可能性は高い。
軽装甲機動車の排ガス適合の話が持ち上がったのが15年であり、それから10年以上の時間をムダにしてきたが、さらに時間の浪費を続ける可能性が少なくない。ほかにも車両調達の失敗例はある。陸自は川崎重工業に対し、水陸機動団向けにV-22オスプレイに搭載できる汎用軽自動車の開発、6両を調達した。これは民間型ATV(汎地形車両)「MULE」をベースにするものだった。
作る前に試験しないという怠惰な陸自
契約額は7743万6000円。ところが実際に水陸機動団で試験したら左右の幅の余裕があまりにもなく、オスプレイに搭載できないことがわかった。サイズは民間車両と同じなので、わざわざ試作車を作らずに民間型を借りて試験すればわかった話だ。
結果、汎用軽機動車はその後調達されることなく、試作車両は水陸機動団の駐屯地内の移動用に利用されているだけだ。これは筆者が陸幕広報に問い合わせて明らかになったが、その後も陸幕はその事実を自ら公表せずに、同車両を総合火力演習や災害派遣で使用するなど、あたかも国民に調達が成功したかのように振舞っている。
しかも調達単価は約1300万円だったが、空自が基地警備用に採用した川崎重工業のATVをベースにした「多目的走行器材」の単価は約500万円で、倍以上の金額だ。陸幕と装備庁の当事者能力の欠如を疑われても仕方あるまい。
筆者は25年5月19日の定例記者会見で、このような質問を荒井正芳・陸上幕僚長に行った。それは、「これらの件を陸自が情報を公開しないのは問題ではないか、公開しないから外部から適切な批判がなされずに同じ失敗を繰り返しているのではないか」と。
これに対し荒井陸上幕僚長は、「全般的な判断の中で公表、あるいはご指摘のあった非公表という形をとってきているというふうに認識をしております。いずれにせよ装備品の調達、それから当然、この運用に係る事項が入ってきておりますので、公表できる情報とできない情報とあります」「陸上自衛隊がどのような形で考えているのかということを察知される可能性があります」と回答した。
