その結果、コマツは近代化の仕事がなくなり、新規に開発した8輪装甲車も能力不足で不採用となってコマツは装甲車事業から撤退することになった。
その後19年から陸幕は「小型装甲車」という軽装甲車の後継プロジェクトを立ち上げた。だが防衛省も陸幕も、先の近代化が失敗した事実を納税者に隠蔽して、しれっとこのプロジェクトを立案したのである。
これには三菱重工業が軍事企業のタレスオーストラリアの装甲車「ハウケイ」(ホークアイ)を、丸紅エアロスペースがGDELS(General Dynamics European Land Systems)の「イーグル」を提案した。両社とも日本でのライセンス生産を前提としていた(イーグルは日立が担当する予定だった)。
ところが23年ごろにはプロジェクトは失敗し、こっそりとフェードアウトされた。なぜ失敗したかを陸幕も装備庁も明らかにしていない。これまた失敗を隠蔽した形だ。
プロジェクト失敗を隠蔽する組織文化
どうも問題は調達単価が高くなりすぎたことのようだ。そもそも両候補とも防御力も高く、調達単価は高い。それをライセンス生産で少数生産すれば、わざわざ試験車両を調達して試験するまでもなく調達価格が跳ね上がる。これは素人が見てもわかる話だった。
そこで陸幕と装備庁は再度仕切りなおして、25年に「次期軽装甲機動車」というプロジェクトを立ち上げた。26年度予算でトヨタ自動車の「ランドクルーザー」2車種と、いすゞ自動車の「D-MAX」の計3車種を調達して防弾化、28年度に評価試験を実施したうえで導入の可否を判断するとしている。
民間車両をベースにこの手の軍用車両や装甲車を開発することは、諸外国で多く見られる。この着想自体は悪くない。だがこれも失敗する可能性が高い。それは陸幕が調達単価を2000万~3000万円程度と過大に安く見積もっているからだ。先の「小型装甲車」プロジェクトで価格が高騰した反動だろうが、現在のインフレ下ではその調達価格で実現させるには不可能だ。
ただ、陸幕はランドクルーザーの完全な装甲車化はあきらめて、必要に応じて防弾板のセットを貼るようなシステムを検討しているという話もある。その場合、調達数を減らし、減らした分は8輪装甲車のAMVで補い、AMVの調達を約900両から1200~1800両程度まで増やすという話も聞こえてくる。
筆者が取材したところ、すでに「D-MAX」は候補から落ちているそうだ。それは同車種が国内では販売されておらず、整備体制に不安があるからだという。
しかし、それは試験用車両を調達する前からわかっていた話だろう。このため候補となる車種はランドクルーザーに集約された。トヨタは以前は手間がかかるわりに儲からない自衛隊の仕事を嫌って撤退も検討していたようだが、最近は防衛予算も増えたためか、再び熱意を示しているという。
