しかし、入社から5年経った2006年になっても、依然として2店舗の利益はほぼゼロ。店長として働いていた那波さんはオーナーに掛け合い、一か八かの勝負に出た。古びた2店舗を同時に閉店し、新店舗をオープンしたのだ。
倒産。「僕が、助ける」
それでも経営が良くならないままの2008年、利益が出ていたはずの系列会社のパチンコ店が倒産した。
ひまわりの建物と土地が、パチンコ店の借金の抵当として最低落札価格9000万円で競売にかけられた。那波さんは、「関連会社のスーパーの店長」として、破産管財人である東京の平田達弁護士と面談することに。 初対面だった平田弁護士に、思いの丈を訴えた。
「スーパーは、気が遠くなるほど地味な商売です。利益は、もやし1袋8円、牛乳1本20円。だけど、利益率の良いカップラーメンや菓子パンばかりを仕入れて販売すると、食べる人の体脂肪率や血圧が上がってしまうかもしれない。
自分たちの利益が大きいとか小さいとかじゃなくて、本当に品質のいい美味しい商品を地域の人に届け、健康を守る。そんな、何よりも尊い商売なんです」
言いたいことは言った。それでも「スーパー単体での利益は出ていない。存続は望めないだろう」 と考えていたが、平田弁護士から出た言葉は意外なものだった。
「那波くんの商売を守れるように、策を練ってみるよ」
そして1年半の時を経て、平田弁護士は言う。
「全財産が6000万円しかなかったから、8000万円を銀行から借りてきた。競売に必要な1億4000万円、準備できたよ」
平田弁護士は、複数の業者が入札に参加しても負けないようにと最低落札価格に5000万円上乗せした金額を準備したのだ。そして、1億4000万円で入札が決まった。競売の入札をする裁判所で、あまりに不思議に思った裁判官が平田弁護士に質問する。
「なぜ、身内でも山梨出身でもないあなたが個人で借金を背負い、破産管財で出会っただけのスーパーを守るのですか?」
平田弁護士は、那波さんの隣でこう語った。
「彼はすごくいい目をして、正しいことを正しいと一生懸命やっている。なのに、これまでの借金のせいで正しい道を歩めなくなっている。それはかわいそうだから、僕が助けるんです」
