たしかに独禁法には先ほど述べたように公取委に刑事告発権が与えられているが、官製談合防止法にはその規定がない。官製談合を行った発注者側のほうが談合を行った民間企業より責任が重いと思うのは筆者だけであろうか。
ただ、公取委の刑事告発権が明示的に与えられていないということであり、警察・検察の刑事訴追が妨げられている訳ではない。14年の北陸新幹線融雪設備談合事件では、発注者である鉄道建設・運輸施設整備支援機構の職員が8条違反で刑事訴追・処罰を受けている。公取委は刑事告発をしていないが、協働して調査・捜査した可能性が高い。今回の首都高官製談合でもそれに関与した者の刑事責任は検討されるべきであろう。
なお、刑事訴訟法239条2項は「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない」と刑事告発義務を規定しているが、行政組織による告発例をあまり聞かない。公取委は官製談合防止法8条違反については刑事告発という形を取らず、検察と協働するという姿勢であろうか。
最終的な被害者は誰か?
談合によって競争が排除されれば、コストは不当に高止まりし、その負担は最終的に公的負担や利用料金という形で納税者、利用者すなわち広く国民に転嫁される。
特に首都高は、日常生活や物流を支える重要インフラである。高速道路料金、物流コスト、商品価格などを通じて、その影響は社会全体に波及する。独禁法や官製談合防止法が守ろうとしているのは、単なる形式的競争ではない。民営化された公共インフラ企業であっても、最終的に守るべき存在は国民であるという原点を改めて社会に突きつけた事件だ。
独占禁止法・消費者法に詳しい池田・染谷法律事務所代表の池田毅弁護士も「発注者自体が入札を歪める官製談合は、効率的な調達という公共調達の理念を台無しにする。有識者委員会には、原因追及はもちろんのこと、将来同様の問題が起きないようにするための再発防止策についても有効な議論がなされることを期待したい」と指摘する。
池田弁護士によれば、公取委が取り上げない地方の案件も含めれば実は近年でも相当数の官製談合が報道されているという。
公取委の独禁法違反とともに官製談合の実態を明らかにした功績は大きいが、首都高が設置した有識者委員会が、組織的関与の有無や天下り慣行の実態にどこまで踏み込めるかが重要である。
