中国との関係においては、極めて鋭く対立している。沈氏は中国政府から「台独(台湾独立)頑固分子」に指定されており、24年から25年にかけて、本人や家族の企業、黒熊学院に対して相次いで厳しい制裁が科された。
さらに25年には、中国の公安当局が沈氏を「国家分裂罪」の容疑で立件・捜査を開始しており、中国共産党にとって最大の敵対者の一人となっている。もっとも本人は一連の圧力を「1年で3回も制裁を受けるのは名誉なことだ」と一蹴している。
今回の出馬表明を受け、民進党支持層や若年層は「首都にふさわしい斬新で頼もしい候補」として歓迎している。しかし、中間層や野党支持者からは「市政の発展よりもイデオロギーや『抗中(中国対抗)』を地方選に持ち込んでいる」という冷ややかな見方も根強く、有権者の賛否は真っ二つに割れている。
地方選の候補者としてふさわしいのか
沈氏と現職である国民党籍の蒋万安市長の政治スタイルや重視する政策を比較すると、両者の間に明確な対立軸が浮かび上がる。
政治スタンスにおいて、蒋氏が実務や市政の安定を重視するのに対し、沈氏は国家の安全保障や都市防衛を最優先に掲げている。支持基盤についても、蒋氏が伝統的な国民党の保守層や経済界、中間層に支えられている一方、沈氏は若年層やリベラル層、そして強い台湾意識を持つ層から支持されている。
政治スタイルの違いも明白である。穏健なエリート気質でイデオロギーの対立を避ける傾向にある蒋氏に対し、沈氏はイデオロギー問題や「抗中」の姿勢を積極的に前面に押し出すファイタースタイルだ。
さらに中国との関係において、蒋氏が「台北・上海都市フォーラム」の継続などに象徴される対話路線の維持を掲げるのとは対照的に、沈氏は徹底抗戦を主張している。自身が中国の制裁対象であることも踏まえ、「現在の中国の強硬な態度のもとでは、対話に応じても台湾にとって意味がない」という強硬な姿勢を崩していない。
